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「大阪桐蔭の2人のバッターが面白い」甲子園で見ておくべき“6人の野手”《城島健司みたいになる? 大型高校生捕手も》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/08/20 17:05
大阪桐蔭の4番花田旭右翼手(3年・186cm84kg・右投右打)
【4】金子京介一塁手(盛岡大付3年)
岩手県予選を見に行って、「いいバッティングするなぁ……」と感心するよりは驚いた【4】盛岡大付・金子京介一塁手(3年・187cm93kg・右投右打)。
あとから「高校通算55本塁打」と聞いて、へぇーと思ったのは、量産型にありがちな本塁打ほしさの「雑味」のようなものを感じなかったからだ。
フワッと構えて、相手投手を威嚇するような「ポーズ」をとるわけでもなく、自分のタイミングと自分のスイングを実践することだけに集中するような、真っ当なバッティングスタイル。
捉え方がいいのと、やはり体格相応のパワーがあるのだろう。打球が、勝手に遠くへ飛んでいく。そんな印象の「プロ」みたいなバッティングをするのが、予選の際の金子京介だった。
その金子京介が、甲子園で予選の時とおんなじバッティングをしてみせたから唸ってしまった。
「甲子園だから……! 特別な場所だから……!」
そんな気負いを感じさせない。
盛岡の球場で見せてくれた「サッと振り抜く」スイングで、鹿島学園のエース・薮野哲也(3年・182cm65kg・右投右打)の速球を弾き返した打球は、猛烈なゴロとなって、三塁手が差し出したグラブの下をあっという間に抜けていった。
普通なら平凡な三塁ゴロコースが、打球に向き合った三塁手を圧倒したように見えた打球の速さはモノが違う。
レフト前に3安打。偏った結果にも見えるが、内容は鹿島学園・藪野の球威に、金子のスイングスピードがまさったから、打球が「引っ張り方向」へ飛んでいったもの。力感もなく、サラッと振って打球がピンポン玉。正真正銘、スラッガーの打球だった。
「一塁手ですからね……。助っ人外国人も守るポジションだったら、もう少し打てないと……」
スカウトたちは腰のひけたコメントだったが、プロ野球の歴史をたどれば「日本人一塁手」が打線の主軸を担って奮闘した例は少なくない。
記憶にあるだけでも、松原誠(大洋、現・横浜DeNA)、衣笠祥雄(広島)、加藤秀司(阪急)、落合博満(ロッテほか)、佐々木恭介(近鉄)、松中信彦(ダイエー)、広澤克実(ヤクルト)、駒田徳広(巨人)、清原和博(西武)、山川穂高(西武)……。(※カッコ内は、プロ入り時の球団)
そして九州学院当時の村上宗隆(ヤクルト)に感じていたような「余力」を、盛岡大付・金子京介のスイングに感じている。こんな夢のある大型スラッガーの卵を、時間をかけて、じっくり大きく育てられるプロ野球チームが、もっとあってよい。