「大阪桐蔭の2人のバッターが面白い」甲子園で見ておくべき“6人の野手”《城島健司みたいになる？ 大型高校生捕手も》

　目玉になりそうな存在が予選で何人も姿を消した「投手陣」だが、今夏の甲子園、一方の「野手陣」はよくぞこれだけ出揃った！と言いたくなる。そんななかから、まず次の4選手をお伝えしたい（投手編はこちら）。

【1】前川右京外野手（智弁学園3年）

　1年夏から甲子園で4番を打った【1】智弁学園・前川右京外野手（3年・177cm90kg・左投左打）が、早いもので、もう最後の夏を迎える。

　大きな期待を担って、気迫と意欲が空回りしているような時期もあったが、高校生のバットマンで山谷（やまたに）のなかった選手などいない。あの「大谷翔平」だって停滞の時期はあった。

　肝心なのは、悩んだあとにひと皮むけるかどうか……学習の跡が見えれば、それがそのまま「成長」だろう。振ってナンボ、振り抜いてナンボ……腹をくくって打席に向かう。この夏の前川右京に、そういう意識が見えていた。

　倉敷商との1回戦、合わせただけのように見えた二塁手の1mほど左のゴロがセンター前に抜けた。強打者は芯で捉えただけで、バウンドするごとに加速するようなゴロを打てる。簡単に捕れると思った打球に、簡単に抜かれてしまうのだ。

　倉敷商の好左腕・永野司のチェンジアップ系にタイミングを外されて、ちょっとのめりながらも、ライトポール右の奥深くにライナーで持っていった打球。惜しくもファウルになって、次の外のボール球に勢い余って手を出して三振したが、「次の打席はやられるかもしれない……」、そんな不気味な予感を相手バッテリーの心中にはっきりと刻み込んだ。

　それも、前川右京のような「スラッガー」の資格に違いない（倉敷商との初戦は10-3で勝利）。

【2】田村俊介（愛工大名電3年）

　もう一人、この大会を代表する左打ちのスラッガーなら、【2】愛工大名電・田村俊介（3年・178cm90kg・左打左投）を忘れてはならない（田村はピッチャーとして先発しているがバッティング面に注目したい）。

　初戦の東北学院戦、いきなりデッカイことをやってのけた。

　2-5とリードされた終盤8回、東北学院のエース・伊東大夢のチェンジアップを、甲子園の右中間スタンド上段まで運ぶ高校通算32弾だ。

　187cmの長身から自信満々に投げ下ろす伊東の投球を打ちあぐんだ愛工大名電の強打線。4回、田村俊介がチーム初安打を放った時も、137キロの速球にやや詰まりながらも、160キロ前後をマークするプロ級のスイングスピードで、打線で初めて振り負けなかった。

　そしてナイターになった8回。カクテル光線の中を、打った瞬間、記者席の誰もが「アッ！」と叫んだ大放物線は、キラキラと輝きながら、それはそれは美しい見事なアーチとなった（追い上げ及ばず3-5で敗戦）。

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