オリンピックPRESSBACK NUMBER
「試合時間が長い野球は厳しい…」“スポーツを見ない”若者が、東京五輪で見た競技は? 球技ではバスケが支持される理由
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2021/08/27 17:03
東京五輪で正式種目に追加されたスケートボード。写真はナイジャ・ヒューストン(アメリカ)
「2007年からインターネット動画配信サービスを始めました。その後、スマホの普及に伴って、動画配信の視聴形態の選択肢が増える時代背景を踏まえ、特に若い世代の視聴を喚起する期待も込めて、2013年から有料インターネットライブ配信『ジャイアンツLIVEストリーム(GLS)』を開始しました。GLS独自の施策としては、個々の選手に密着したチームのインサイド映像に加え、さまざまな視点から打撃シーンを視聴できるマルチアングル配信や、声優の方々などとのコラボによる副音声配信の検討を進めています」
また、地上波のジャイアンツ戦では、バックスクリーンにカメラを置くことで変化球の曲がり具合をよりリアルに伝える『新・球筋カメラ』、フェアゾーンからの視点でプレイを追う『2塁塁審カメラ』の他、各打者ごとに作戦成功の確率をAIで分析したり、打球の速度・角度・飛距離などを即時計測する『バッティング解析』など、新しい視点による映像を多数提供するなどの施策を実施し、野球ファンだけでなく若い世代からの反応も上々だという。
YouTube(48万人)もTikTok(14万人)も試行錯誤
「SNSの活用も進めています。コロナ禍においてファンとの接点を増やすために内容を拡充しており、チーム帯同職員が長時間にわたって選手に密着して映像を撮りため、短時間で選手の魅力を伝えられるように映像を選りすぐって配信。おかげさまで公式Twitterのフォロワー数(57.2万人)や、Instagramのフォロワー数(44.1万人)、YouTubeのチャンネル登録数(48.4万人)は大幅に増加しています。最近では選手のTikTok動画(フォロワー数14.6万人)も配信しており、さらなる若年層との接点拡充をはかっています。まずはジャイアンツのSNSのフォロワーになっていただき、そこからGLSへの加入に繋げ、配信ならではのコンテンツを充実させていきたいと考えています」(※各フォロワー数は8月26日現在)
実際、7月21日に開催した1~3軍混合の紅白戦では公式SNSと連動したPRの結果、試合当日のGLSへの新規登録者数は2020年以降で最多を記録したという。
SNSや配信などを組み合わせた方法で若年層へのアピールを展開しているジャイアンツ。しかし、永久に不滅とも言われた巨人軍がここまでの施策を行わなければ新規客を獲得できないという事実が、いかに若年層をスポーツに呼び込むことが難しいかを示しているだろう。
とはいえ、かつてに比べるとSNSやYouTubeなどの普及で消費者との距離は近くなり、マイナーなスポーツであっても直接的なリーチが可能になった。その中で興味関心を引ければ「サブスクリプションサービスに慣れた若者たちは上の世代に比べて、好きなものに毎月一定のお金を出す」(原田氏)のである。
そうしたサブスク需要には、映画やアニメなどの多くのライバルがひしめいている。スポーツ業界のガリバーDAZNですら加入率が3%にとどまるという数字が、それを端的に表していよう。VRやカメラアングルなどの新テクノロジーの活用や、SNSを中心としたキャッチーなコンテンツ作成に今後もスポーツ業界は大いに頭を悩ませるはずだ。彼らの努力の先に、さらなる斬新なスポーツ視聴体験ができることを、いち消費者としては楽しみに待ちたい。
(【前編を読む】若者たちに不人気な「スポーツ観戦」…東京五輪で若年層の視聴率は伸びた? プロ野球中継のメイン視聴者は“75歳以上”説も… へ)