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「試合時間が長い野球は厳しい…」“スポーツを見ない”若者が、東京五輪で見た競技は? 球技ではバスケが支持される理由
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2021/08/27 17:03
東京五輪で正式種目に追加されたスケートボード。写真はナイジャ・ヒューストン(アメリカ)
「たとえば野球は、若者からしたら厳しい部類。テンポが悪く、試合時間も長く、ルールも複雑です。テレビを見慣れている中高年にとってはいいですが、若者は2時間つきあってくれません。一方、今回の五輪で正式種目に追加されたサーフィン、BMXなどは、テンポが良く、試合時間も短い。さらに、若者のファッションやライフスタイルにも通じるところが大きい。さすが IOCはおカネに敏感なだけあって、この点は非常によくマーケティングができています」(鈴木氏)
「バスケが好感され、サッカーが伸び悩む」それぞれの理由
一方、古い伝統を誇るスポーツであっても、やり方次第で可能性はありそうだ。ニールセンの調査によれば、若年層は他の世代と比較し、バスケットボールを観戦したいと答えた割合が、4ポイント高いことがわかっている。得点が入りやすく、試合展開が速い点が受け入れられているのだろう。
また、大手コンサル企業のPwC(本社:英ロンドン)が発表した「PwCスポーツ産業調査2020」によれば、ミレニアル世代(18~34歳)の1週間あたりのスポーツハイライト視聴時間は、4612人の平均で5時間43分。非ミレニアル世代(35~65歳)の16655人の平均が週に3時間23分。これを比較すれば、若者のハイライト志向は明らかであり、PwCは、「集中時間の短い若いファンに有効に働きかけるからだろう」と分析している。
だが、いくらスピーディーな展開で若者の興味をつかめる競技であっても、複数の視聴手段が存在しなければ、ファン獲得の面で広がりを欠いてしまう。世界的にはサッカーは最も人気のあるスポーツにもかかわらず、我が国のJリーグが伸び悩んでいる理由はここにあると、鈴木氏は指摘する。
「スマホ世代の若者に向けるならば、試合動画とハイライトは必須。そしてより深く興味を持っている人向けに、選手のドキュメンタリーなども含めた複数のコンテンツがいつでもスマホで見られる仕組みを構築すべきです。このような複数種類の動画コンテンツを自由に見られる環境に置くことが重要ですが、Jリーグの中継はDAZNのほぼ独占。クローズドな状態にあるため、試合動画、ハイライト、ドキュメンタリーなどを広範に届けることができず、高いポテンシャルを活かしきれていないのではないでしょうか」
そもそもJリーグは地域密着スタイルゆえ、全国放送を前提とする当時の地上波放送に定着できず、CSなどの有料放送に頼らざるを得ないまま歩んできた経緯がある。