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野口みずきの日本新が更新されずに16年…“元祖お家芸”日本のマラソンはなぜ表彰台から遠のいたのか? 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byJMPA

posted2021/08/17 11:02

野口みずきの日本新が更新されずに16年…“元祖お家芸”日本のマラソンはなぜ表彰台から遠のいたのか?<Number Web> photograph by JMPA

2004年のアテネ五輪で野口みずき選手が金メダルを獲得して以来、日本勢は表彰台から遠のいている

 女子も優勝争いはケニア勢だった。35kmまでの5kmを16分54秒に引き上げると、40kmまでの5kmを17分1秒でカバー。他国の選手を寄せつけなかった。ペレス・ジェプチルチルが世界記録保持者・コスゲイを抑えて、2時間27分20秒で優勝した。

 ジェプチルチルと一山のタイム差は2分53秒だったが、金メダリストは女子単独ハーフマラソンで1時間5分16秒の世界記録を持っている。一山は今回のコース部分を使用した5月5日の札幌マラソンフェスティバル・ハーフマラソンで1時間8分28秒の自己ベストで走っているが、ハーフで3分以上のタイム差があった。

大迫が東京五輪で見せた「日本人選手のお手本」

 暑さとの戦いもある世界大会は序盤から高速レースになることはほとんどない。しかし、終盤の勝負どころでは「スピード」がものをいう。マラソンで世界トップと互角に戦うためには男子でいえば5000m12分台、10000m26分台。女子ならハーフで1時間5分台のスピードを身に付ける必要があるだろう。

 マラソンは先頭集団にどこまで食らいつけるかという“我慢比べ”ではなく、42.195km先のゴールにいかに早くたどりつくのかというゲームだ。東京五輪で見せた大迫のレース運びが日本人のお手本になるだろう。無駄なエネルギーを使わないように、ペース変化の少ない集団後方で静かにレースを進行。終盤も無理をするのではなく、マイペースで攻めていった。

「無理に3位以内を狙ってしまうと大きく崩れる心配がある。ひとつひとつ自分の対応できる範囲で身体と相談しながら走りました。最後は痛みもあり、きつかったですけど、100点満点の頑張りができたのかなと思います。次の世代の人が頑張れば、この6番というところから絶対にメダル争いに絡める。次は後輩たちの番だと思います」

メダル獲得は「オリンピックよりも世界選手権」が近い

 日本人エースの“ラストラン”に心を揺さぶられた次世代ランナーは少なくないはずだ。大迫のように貪欲に強さを求めていくことができれば、メダルの可能性は十分にある。

 なお、キプチョゲなど超メジャー選手は2年に一度の世界選手権よりも、出場料と賞金で勝るメジャーレース(ベルリン、シカゴ、ニューヨークシティなど)を選ぶケースが目立つ。日本がメダルを狙うなら、オリンピックよりも世界選手権の方が近い。

 著者も大迫と同じく、日本人選手が再び世界大会でメダルを獲得する日がやってくると信じている。それを達成する若者たちの登場を楽しみに待ちたい。 

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