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“74年ぶり昇格ロンドンの小クラブ”には下部組織がない? 特殊な育成と補強、ハイプレスに活路を求めた理由《プレミア開幕》 

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三重野翔大

三重野翔大Shodai Mieno

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posted2021/08/13 17:02

“74年ぶり昇格ロンドンの小クラブ”には下部組織がない? 特殊な育成と補強、ハイプレスに活路を求めた理由《プレミア開幕》<Number Web> photograph by Getty Images

プレミア初昇格を果たしたブレントフォード。独特なクラブ方針で世界最強リーグを渡り歩けるか

ハイプレス戦術で過去2シーズン159得点!

 トニーを支える両翼にも注目したい。元リバプールのセルジ・カノスは昨季9ゴール8アシスト、そしてブライアン・ムベウモは8ゴール10アシストを記録した。

 特に後者はうち6アシストがトニーのゴールに繋がるなど、エースと最高の関係性を築く。ちなみに19-20シーズンもチーム得点王のオリー・ワトキンス(現アストンビラ)へ、チーム最多の4アシストをしている。

 ともにカットインのプレーを得意としながら、トニーと相互の特徴を活かしあう流動的な攻撃はプレミアの舞台でも大きな武器となるはずだ。

 ハイプレスを用いた攻撃的なスタイルも魅力的。今や多くのトップクラブが導入する戦術を駆使し、この2シーズンで159ゴールを稼いでいる。

 特に素早いトランジションは磨きがかっている。ボールを失ってもすぐさま取り返さんと、人数をかけてプレスをかけるその姿はまさに、獲物に群がる蜂のようである。時に災いしディフェンスラインが手薄になることもあるが、守備面の不安はアイェルの加入で多少拭うことができるだろう。

昇格組に「強気の姿勢」は必要だ

 何より昇格組にとって「強気の姿勢」は必要だ。

 3トップの強みを最大限に活かした18-19シーズンのウォルバーハンプトン、CBのオーバーラップという大胆な戦術を用いた19-20シーズンのシェフィールド・U、マルセロ・ビエルサ独自のアルゴリズムで攻撃的なフットボールを展開した20-21シーズンのリーズ。

 昇格組だからといって弱者に徹するでもなく、攻めの姿勢を貫いた彼らはいずれも昇格1年目をトップハーフで終えているのだから。

 プレミアリーグ創設の1992-93シーズン以降、昇格1年目のクラブの残留する確率は55.8%。さらにこれまで昇格でプレミアリーグ初挑戦を果たしたのは30クラブあり、うち17クラブは初年度で残留を果たしている。

 もちろんデータが全てではないが、プレミアリーグ常連クラブからすれば、普段戦い慣れていない相手との対戦はどうしても難しくなるはず。そして何より、夢に見たプレミアの舞台に選手もファンも士気が高まっている。初昇格のクラブが半分以上も残留を決めているのは偶然ではない。

 リーグ創設後50番目のクラブとして歴史に名を刻むブレントフォード。その初陣はアーセナル戦だ。

 プレミアリーグ3度の優勝、もちろん29年間一度も降格したことなどない名門中の名門。現在の立ち位置を知るにはこの上ない相手だ。

 プレミアリーグの洗礼を浴びるのか、はたまた攻めの姿勢で追い詰めるのか。内容いかんでは、世界中が“Bees”に注目することになる。

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