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“74年ぶり昇格ロンドンの小クラブ”には下部組織がない? 特殊な育成と補強、ハイプレスに活路を求めた理由《プレミア開幕》
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/08/13 17:02
プレミア初昇格を果たしたブレントフォード。独特なクラブ方針で世界最強リーグを渡り歩けるか
ロンドンだと結局はチェルシーやアーセナルが……
ブレントフォードのホームタウンはロンドン。そう、強豪クラブがひしめき合う激戦区だ。
たとえば将来プロになる素質を持った少年が現れたとして、結局はチェルシーやアーセナルのアカデミーに入ってしまうということだ。必然的にブレントフォードは才能豊かな少年を集めることが難しくなってしまう。
そうしてできたアカデミーの体質もあり、ブレントフォードは優秀な若手を輩出できなくなっていた。共同ディレクターはそれを、コストに見合ってないと判断したのである。
そして彼らが次に考えたことはこうだ。
「ゼロからプロを育てるのではなく、プロになれなかった選手を育てよう」
チェルシーやアーセナルのようなクラブでトップチームに昇格できる選手はほんの一握り。しかしその才能に疑いの余地はない。ではビッグクラブの競争に敗れた選手らをかき集めてみてはどうか。
そこで誕生したのがBチームである。イングランド国内のアカデミーの動向を追い、優秀でありながら選考に漏れた若手を入念にリサーチした。
加えてオーナーのマシュー・ベンハムが経営権を所有するミッティランをはじめ、デンマークの有望株をブレントフォードのBチームに迎え入れたのだ。
我々のチームの平均年齢は18歳、相手は24~25歳
実戦経験においてもBチームのメリットを大いに活かした。
クラブ自身で練習試合を手配しなければならないと述べたが、逆に言えばその対戦相手に制限はない。そう、必ずしも同年代でなくてもよいのだ。
マッチメイクに全精力を注いだ結果、リバプールやマンチェスター・Uといった強豪のU-23チームとの試合が実現。場合によってはプロと戦うこともあるくらいだ。
「このやり方はうまくいってると思うよ」
ブレントフォードBの監督、ニール・マクファーレンはこの体制が機能しているという。
「我々のチームの平均年齢は18歳だが、相手は24~25歳だ。通常のU-23チームとは異なる形で、(年上の)男を相手にテストをしているんだ」