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“74年ぶり昇格ロンドンの小クラブ”には下部組織がない? 特殊な育成と補強、ハイプレスに活路を求めた理由《プレミア開幕》
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/08/13 17:02
プレミア初昇格を果たしたブレントフォード。独特なクラブ方針で世界最強リーグを渡り歩けるか
16歳でアーセナル育成組織から漏れたが翌年……
昨シーズン、17歳でトップチームデビューを果たしたフィン・スティーブンス。彼は16歳でアーセナルのアカデミーから放出された、かつての有望株だ。
このようにトップチームに多くの選手を輩出できるようになったことは、数年前から大きく進歩した点である。制限なく選手を集め、よりプロに近い相手との実戦経験を多く積ませることで、チャンピオンシップの舞台でも遜色ないパフォーマンスができるのだ。
強豪クラブではないブレントフォードの立場だからこそ生まれた新しい育成の形。発足から5年が経過したこの体制は後に偉大なロールモデルとなるかもしれない。
今夏の移籍市場では2人の即戦力を獲得
ここからは今季のトップチームの話をしよう。
今夏の移籍市場で積極的に動いたブレントフォードは、加入した2人の即戦力が鍵を握りそうだ。
ひとりはミッティランから獲得したナイジェリア代表MFフランク・オニェカ。
プレスやタックル、インターセプトはもちろん、パスコースの限定といった予測動作も的確で中盤での守備力が武器。そしてボールを持てばドリブルでチームに推進力を与えられる。こうした強みは豊富な運動量やアジリティの高さからくるものであり、タイプ的には同胞の先輩、ウィルフレッド・ディディ(レスター)に近い選手だ。
そしてもうひとりは大型センターバックのクリストファー・アイェル。
195cmの長身と強靭な肉体をもつノルウェー代表の23歳は、スコットランドの強豪セルティックから加入した。対人守備に加え、もともと中盤でのプレーを得意としていたこともあり、ドリブルやボール供給にも安定感がある。現代のCBに求められる役割を高い水準でこなす万能型だ。
中堅国の強豪で絶対的な存在だった彼らの加入は、昇格組のブレントフォードにとって非常に心強い。
既存のメンバーでいえばやはり、チャンピオンシップでリーグ最多の79ゴールを奪った攻撃陣に目を向けるべきだろう。なんといっても、昨季リーグ戦33ゴールで得点王に輝いたアイバン・トニーの放つ存在感は突出している。
その得点力もさることながら、ボールキープやポストプレーで前線の起点、そしてセットプレーの脅威になることもできる。また10アシストを記録するなど、チャンスメイクでも貢献できるストライカーが、プレミアリーグの守備陣を相手にどこまで通用するのか楽しみだ。