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“74年ぶり昇格ロンドンの小クラブ”には下部組織がない? 特殊な育成と補強、ハイプレスに活路を求めた理由《プレミア開幕》
posted2021/08/13 17:02
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph by
Getty Images
74年ぶりである。
愛称は蜂を意味する“Bees”、ブレントフォードが再びトップディビジョンに戻ってくるまでにかかった時間だ。1946-47シーズンに2部に降格して以来の復帰。当然、プレミアリーグ創設後は初昇格ということになる。
昨季、チャンピオンシップの昇格プレーオフ決勝でスウォンジーを下したクラブは、日本時間の8月14日早朝、他に先駆けてアーセナルと今季の開幕戦を戦う。
そんなブレントフォード、実はなかなか特殊なクラブ構造をしている。
下部組織、つまりアカデミーが存在しないのだ。正確には廃止したというべきか。
イングランドのフットボールにおいてアカデミーは若手育成の生命線。高校や大学の部活動から優秀な選手が育つ日本とは異なり、学校などで「プロ育成」の概念をもたないので、優秀な若手は自ら発掘・輩出するのが通常だ。
ではアカデミーなきブレントフォードは、どうやって若手を育成しているのか。
2016年にアカデミー廃止、Bチームを設立
2016年夏、育成機関の改革を託された共同ディレクターのフィル・ジャイルズとラスムス・アンカーセンが下した決断はアカデミーの廃止、そしてBチームの設立である。
いや、何がどう違うのか。
アカデミーの場合、年代別にリーグ戦やFAユースカップなどのカップ戦が設けられている。ある意味所属しているだけで無条件に、他のプロクラブのアカデミーと毎週試合を行うことができるのだ。これはJリーグのアカデミー制度や日本の高円宮杯プレミアリーグやプリンスリーグなどに近いといえる。
一方「Bチーム」とは、いわばクラブが独自で設立しているもの。規則に縛られることはないが、所属するリーグなどがないために、実戦を行うにはクラブ自らで手配しなければならない。
もちろんブレントフォードもアカデミーを持っていたが――土地柄、このクラブには大きな障壁があった。