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ドイツの育成現場で活躍する日本人サッカーコーチが提言 「夏休みはしっかりと休む」ことが子どもの上達を促す理由 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/08/12 17:01

ドイツの育成現場で活躍する日本人サッカーコーチが提言 「夏休みはしっかりと休む」ことが子どもの上達を促す理由<Number Web> photograph by Getty Images

日本では夏休みに多くの大会が開かれるが、ドイツの育成現場ではしっかりと休むことが推奨されている

 以前、とある日本のサッカークラブが夏休み中の活動を休止にしたところ、多くの選手が他クラブへ移籍したという話を聞いたことがある。夏休みに練習すべきか否か以前に、夏休み中も子どもたちを預かってくれる場所が日本の多くの家庭では必要、という事実がある。

 そういった意味でも、部活動やスポーツ少年団、スポーツクラブの活動はとても貴重なものと言える。そう考えると今の時代、クラブとしての活動時間は確保したうえで、その時間の中で遊んで、休める環境を準備することが求められているのではないだろうか。練習するばかりが大事なことではない。

「指導者にも、先生にも休みが必要だ」

 日本の夏は暑い。もはや猛暑なんて言葉では言い表せないくらい暑い。そうしたなかで無理をして練習を重ねることが、どこまで子どもたちの成長に結びつくのだろうか。

 日本では夏場にとかくいろいろな大会が開催される。ただし、それがどんな大会であれ、本当にあれもこれも参加する必要があるのか熟考してほしい。遠征もそう。「昨年コロナの影響で遠征を断念したけど、逆にそのおかげでゆとりのあるスケジュールが組めたし、子どもたちが成長した」と語る育成指導者が少なくないのには理由がある。

 そして「指導者にも、先生にも休みが必要だ」という認識が広がることも欠かせない。事務に追われることなく、毎日の練習スケジュールに頭を悩ますことなく、責任の所在に苦しむことなく、頭のなかを空っぽにして、のんびりと過ごす時間が、どうしたって指導者や先生にも必要だ。

 数日休めば疲れの蓄積は緩和されるが、しっかりとは取れない。休んでいるつもりでも頭のなかではいろいろなことがぐるぐる回ってしまう。考えないようにしてもスイッチが入って考えてしまう。気持ちが引っ張られている状況だと、心も頭もなかなか休まらない。

 誰かが何かを背負いこむことで前に進む状況は、できるだけ避けた方がいい。どこかに負担が集中して、その人の頑張りで成り立つ図式はやっぱり危険だ。長続きしない。

 ボーフム大学心理学部のミヒャエル・ケルマン教授が、「1年間のうちにできれば2週間前後の長期休暇を2度取ることが望ましい」と強調していたことがある。

「心のあり方、生活の送り方、健康管理への考え方、人間関係における距離の取り方……、そうした様々なコンディションコントロールへ無意識的に、さらには意識的に気を配れるまとまった時間が、大人にも子どもにもとても大切なのだ」

 安心、安全。

 これは、東京オリンピックを開くうえでのスローガンのひとつとなっていた。でもそれは僕らの日常にとっても何より大事なベースだ。

 安心、安全を実現するためにも、無理せずに取り組める、健康と人権が守られたなかで活動できる、そんなバランスを時代に合った形で作り上げることが大切ではないだろうか。

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