Overseas ReportBACK NUMBER

メダリストが明かす“コロナ後遺症の恐ろしさ”「跳ぶという動作が自然にできない」「代表になれないんじゃないかと…」 

text by

及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2021/08/07 17:05

メダリストが明かす“コロナ後遺症の恐ろしさ”「跳ぶという動作が自然にできない」「代表になれないんじゃないかと…」<Number Web> photograph by Getty Images

女子棒高跳びで金メダルを獲得したケイティ・ナジョット。彼女は昨年12月に新型コロナウイルスに感染して“後遺症”に悩まされた選手の1人だ

 4月にコロナに罹患し、練習が全くできない状態になった。

 順調に冬季練習をこなし、10秒台は間違いないという手応えがあった矢先にコロナにかかった。発熱などの一般的な症状が治まった後も、倦怠感や動悸、息切れなどの後遺症に悩まされ、練習でも追い込むことが難しかったという。

「怪我もなく順調にきていたのに……」

 全米オリンピック選考会、予選11秒17、準決勝10秒96とタイムを縮めた。決勝は11秒16で6位。

 ガードナーの目からは涙が溢れ出た。

「準決勝から決勝までが1時間半くらいしかなかったんだけど、準決勝のレース後に脈拍が100くらいあって、動悸がまったく収まらなかった。みんなは決勝に向けて動いていたけど、私は何もできない状態でずっと横になっていて、やっとのことでスタートについた。怪我もなく順調にきていたのに。コロナにならなかったら……」 

 泣き続けるガードナーの気持ちが痛いほどわかった。

 筆者もコロナに罹患し同じような後遺症に長い間悩まされた。特に、動悸は激しいワークアウトなどをしたかどうかに関係なく、静かにしていても本当に突然襲ってくる。しかも心臓のドキンドキンという音が周囲に聞こえるのではないか、というくらいだった。

 安静にしていてもつらいのだから、100mという普通でも脈拍が上がる種目をしているガードナーがどれだけつらかったのか、想像すらできない。そんな状況でガードナーが100mを2本走りきったのは、超人以外の何者でもない。

 8月5日のリレー予選後、体調を聞くと、「もう苦しさはなくなって少しずつ前に戻ってきた。心配してくれてありがとう。一緒にがんばろうね」と笑顔を向けられた。

コロナで苦しむ人は確かにいる

 東京オリンピック開催の影響もあり、コロナ感染率が上がっている。メディアの一人として東京オリンピックに関わり、少なからず盛り上げ役にまわっている中でこういった記事を紹介するのはいかがなものかとは思う。

 しかしナジョット、ガードナーのような後遺症以外にも、味覚や嗅覚異常、手足の麻痺、倦怠感などに悩む選手がいて、それを共有できなかったり、理解してもらえず苦しんでいる人も多い。その事実を知ってもらいたい。

関連記事

BACK 1 2 3
#ケイティ・ナジョット
#イングリッシュ・ガードナー
#東京五輪
#オリンピック・パラリンピック

陸上の前後の記事

ページトップ