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“9秒台が4人でハイレベル”と言われた陸上短距離勢は東京五輪に何を感じたか 「世界に置いていかれている感じがしました」
posted2021/08/07 17:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Ryosuke Mouju/JMPA
バトンは、届かなかった。
8月6日、陸上男子4×100mリレー決勝。多田修平、山縣亮太、桐生祥秀、小池祐貴、予選と同じオーダーで臨んだ日本は、1走の多田と2走の山縣の間でバトンがつながらず、途中棄権で終わった。
山縣はこう振り返っている。
「目標を達成するために攻めたバトンをやろうとした結果です」
小池も言う。
「攻めたバトンでいける、と臨んだ結果なので」
山縣と小池が「攻めたバトン」と言葉にしたように、「必然」の選択の結果だった。
目指したタイムは37秒4~5、イタリアは37秒50
前日の予選は、「安全バトンでした」と桐生が表したように、確実に決勝へ進むことを優先した。バトンパスでミスがないようにつなぎ、決勝には9位で進出した。
その決勝では、「攻めていく」ことを4人は確認し合った。個々の走りの修正も図りつつ、ぎりぎりのバトンパスを行なうことを選択した。
リスクは大きくなる。ただ、目指してきたのは金メダルだ。目標タイムは、37秒4~5に置いたという。日本記録の37秒43に匹敵するラインだ。優勝したイタリアは37秒50、2位のイギリスは37秒51であった。「攻めたバトン」は目標から逆算しての選択であり、金メダルを狙える走りを期した上での結果だった。その戦略は、誤りではないだろう。