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「楽しむことがメイン」平野歩夢(22)が挑む“専門外”のスケートボード…冬季五輪メダリストが“4番手”でも笑顔で滑り続ける理由 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byAsami Enomoto

posted2021/08/05 06:00

「楽しむことがメイン」平野歩夢(22)が挑む“専門外”のスケートボード…冬季五輪メダリストが“4番手”でも笑顔で滑り続ける理由<Number Web> photograph by Asami Enomoto

「高さやスピード、自分にしかできない魅力的な滑りを伝えられれば」と思いながら滑ったと語った平野

「まさか」の表彰台ゲットで東京五輪へ

 結果は66.87点で、昨年のアジア大会優勝の笹岡建介(72.40点)、永原悠路(66.90点)に続く3位。五輪出場のために必要な五輪ランキングポイントを獲得するには、今大会と5月の日本選手権の総合成績で上位3人に入り、海外派遣される強化候補選手に選ばれる必要がある。

 今大会で上位に入れなければ東京五輪への道は早々に閉ざされていた可能性もあった。しかし平野自身が「まさか」と驚いた表彰台ゲットで、世間の関心もこの先へとつながった。

 そして、やはり印象に残ったのはスノーボードでの緊迫感とは少し違った楽しげな顔である。

プロスケーターからも感謝の言葉

 試合後の平野にスノーボードの大会よりも楽しそうだったねと聞いてみると、「そうですね。まあ、確かにそう」と答えて再び表情を緩めた。

「スケートボードは楽しんで(滑る)。スノーボードよりも楽しむことがメイン。本当にみんな上手なので、そんなに簡単にはいかないのが現実だと思う。楽しめて、結果よりもそこが次につながればいいかなって」

 今大会でMCを務めたプロスケーターの上田豪は、名声に傷をつけるリスクを恐れず、スケートボードの普及のために出場を決めた平野に感謝を込めて言った。

「僕は彼が小さい頃から滑りを見てきた。高さを特徴にするためにはその前の動作がすごく大事で、踏む力、そしてそれを素直に上に持っていく力。1つ1つの点と線を結びつける能力がすごく高い。そこはスノーボードともがっちりつながっている。

 ただしスノーボードであれだけすごくなったのは、スケートボードのバーチカルをやっていたから。彼はスノーボードからスケートボードに来たんじゃなくて、スケートボードから来たからスノーボードがある。そして、今回その原点に戻って滑ってくれた」

【次ページ】 「挑戦したことで、少しでも何か伝わればいい」

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