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五輪代表“ビースト”林大地の「反転」は柔道着トレ効果? ゴン中山、ドラゴン久保も習った、忍者由来の“夏嶋流突破術”とは
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by7044/AFLO
posted2021/07/16 11:05
3月のアルゼンチン戦でゴールを決めるなど、猛アピールの末に東京五輪メンバー入りを果たしたFW林大地
この逃げる体質は、長年お題目に掲げてきた “日本人らしさ”と無縁ではない。
屈強なヨーロッパ人、南米人にフィジカルで劣る日本人が勝つには、俊敏さや勤勉さで勝負するべきだ――。
こうしたお題目をメディアが唱え続けたこともあり、接触を避けるサッカーが定着した。
敵がひしめくゴール前で身体を張るのは、もっぱら外国人の仕事。
たとえば川崎フロンターレの強さは、レアンドロ・ダミアンに拠るところが大きい。彼が密集で確実にボールを収めることで、三笘薫や家長昭博、山根視来らが生きてくる。エリア内に1秒ボールを置くだけで、ゲームの様相は確実に変わるのだ。
夏嶋は、ヴィッセル神戸のイニエスタの姿勢を評価する。
「彼はいつも、目の前の敵の背後に行くことを考えています。パスを預けた味方が、外や後ろにつけたりすると、“なんで?”と不満を表わしますからね」
なぜフォワードが柔道着を?
関西でも強豪とはいえない当時の大体大で、夏嶋は目の前の敵の向こうに行くための練習を始めた。だが、それは前代未聞のメニューで、部員たちを驚かせた。
よくあるゴール前の1対1では、なぜかフォワードが柔道着を着ている。そしてフォワードがボールを収めた瞬間、背後についたディフェンダーが羽交い絞めにしたり、腕をつかんで引っ張ったりして邪魔をする。サッカーというより、格闘技だ。
この効果を示すエピソードがある。
大体大での指導を始めてからしばらくして、ひとりのサッカー少年が夏嶋教室の門を叩いた。
「大人に勝つ方法を教えてください!」
ゲームでいつも大人たちに軽くあしらわれて、毎日悔しい思いをしていたようだ。
夏嶋は、少年の課題を次のように指摘する。
「子どもが大人に1対1を挑むと、捕まりたくないので目の前にいる大人を避けようとする。そうなるとゴールから斜めに離れていくことになり、結局スピードに勝る大人に捕まってしまう。これは子どもに限らない日本サッカーの傾向です」