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五輪代表“ビースト”林大地の「反転」は柔道着トレ効果? ゴン中山、ドラゴン久保も習った、忍者由来の“夏嶋流突破術”とは
posted2021/07/16 11:05
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
7044/AFLO
“ビースト”の異名を取る、興味深いストライカーがいる。
東京オリンピック代表に名を連ねる、サガン鳥栖の林大地だ。一度は選考から外れたが、選手登録枠が18人から22人に拡大されたことで返り咲きを果たした。
7月12日のホンジュラス戦ではスタメンに抜擢され、1アシスト。決定機を外すなど課題を残したが、らしさも見せた。
8分、左サイドに流れて縦パスを受けると、敵に背後から抱えられながらも強引に反転して突破を仕掛け、フリーキックを獲得。この荒々しさ、意外性が、“ビースト”の由縁である。
このユニークなスタイルは、大阪体育大学時代に培われた。
ガンバ大阪ジュニアユースから履正社高を経て、大体大に進んだ林は、関西を代表するストライカーに飛躍する。3年生のときに関西リーグ得点王に輝くと、4年生になってユニバーシアード代表となり、世界一に貢献。鳥栖でも1年目からチーム最多の9ゴールを記録し、2年目の今季は東京オリンピックにたどりついた。
元バレーボール監督の夏嶋隆氏
林の躍進は、ひとりの指導者を抜きにして語ることはできない。夏嶋隆という動作解析の専門家だ。
バレーボールの指導者として1990年代、久光製薬を率いた夏嶋は、人間本来の力を引き出す動作解析の道に進み、2000年からサッカーに関わるようになる。大体大サッカー部の依頼を受け、強化に携わるようになった。
サッカーの指導を始めるにあたって大体大サッカー部の試合映像を見た夏嶋は、もどかしい思いに駆られた。
「サッカーはゴールを決めなければ勝てないのに、ゴール前でパスを受けたフォワードはなぜか下げるかサイドに預けてしまう。ドリブルを仕掛けても、斜めに逃げていってしまう。目の前か背後の敵の向こうにゴールがあるなら、その敵をどかしてシュートを撃ちに行けばいいのに」
これは大体大に限らない、日本サッカー界の課題でもある。
ゴールに直結するペナルティエリア周辺は、虚実を尽くした駆け引きが繰り広げられるが、日本は淡白であっさりしている。密集にクサビを入れても、そこからゴールを狙おうとせず、すぐに下げるケースが少なくない。