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DeNA佐野恵太が今年もヒットを量産できるワケ…SB松田宣浩に教わった、試合前に毎回やっていることとは?
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/07/15 11:07
前半戦、打率3割超えで、2年連続首位打者も現実味を帯びてきた
「シフトを敷かれることに慣れていなかったので正直最初は違和感があって、自分自身で不利な状況に追い込むこともありました。けど結局大事なのは自分のスイングをして、強い打球を打つことが一番の打開策ということに気づいたんです。それがヒットになるか、ならないか。だから守備がいないところに打つ、といった考えはないんです」
まさに極論。シフトを意識し過ぎてバッティングのバランスを崩せば本末転倒になる。そして佐野は、目線をぶらすことなく次のようにつづけるのだ。
「シフトを敷かれる打者というのは、はたから見ていていい打者が多いので、ある意味、もっとシフトを敷かれる打者にならないといけないなって思っているんです」
苦戦のなかキャプテンにできること
キャプテンも2年目、佐野はすっかりたくましい存在になった。
ただ、チームを牽引する立場としては苦しい前半戦であったことは間違いない。チームは開幕から6連敗、さらに10連敗を喫するなど新指揮官の三浦大輔監督にとって前途多難な出航となった。ハードラックともいえる日々、果たして佐野にはどんな風景が見えていたのだろうか。
「1勝することがこんなに難しくて、遠いことだったのかと……。負の連鎖じゃないですけど、とくに4月は上手く行かないなと強く感じていましたね……」
苦しい時期、佐野はキャプテンとしてロッカーなどバックヤードで必死に動いていた。
「選手だけのミーティングはかなりやりましたね。他の選手たちからも、こうしたほうがいいとアイディアを持ち掛けられたり、いろいろなアクションを起こしました。普通、試合後にミーティングをすることはないのですが、負けに慣れてしまうのが嫌だったというか『今日も負けた』の繰り返しになるのを避けたくて、ゲーム後に『明日、自分たちは何をすべきか』を話し合い、意見を交換し、あらためて翌日の試合に入っていけるようにしました」
引きずらず、切り替えて、新たな気持ちで翌日へ向かう。それは決して淡々としたものではなく、悔しさを胸の内に秘め、やられたらやり返す、このままでは終われないといった強い気持ちを出していくことが求められた。
そんな姿勢が実を結び出したのが、パ・リーグとの交流戦だったという。チームは9勝6敗3分と勝ち越し、沈むことなくかろうじて浮上した。