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DeNA佐野恵太が今年もヒットを量産できるワケ…SB松田宣浩に教わった、試合前に毎回やっていることとは?
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/07/15 11:07
前半戦、打率3割超えで、2年連続首位打者も現実味を帯びてきた
「戦うチームも変われば、プレーする球場も変わったことで、新たな気持ちになれたのは大きかったと思います。最初のカードのオリックス戦で勝ち越せたことで、自分たちもパ・リーグのチームと十分やれるんだという自信みたいなものがついたんじゃないかと」
野球は流れのスポーツであり、小さなきっかけでチームの雰囲気は変わる。ただ一方で佐野は、強い危機感も持っていたという。
「もしも交流戦でズルズルいき負けが込んでしまったら、今シーズンが終わってしまうのではないかと考えていました。ここで巻き返さないと後半戦だとか言っている場合ではないって」
まだ借金は13あるが、残り約60試合、何とか勝率5割付近まで戻すことができればAクラスも見えてくる。佐野にそう問うと、力強くうなずいた。
「僕たちとしては上がって行くだけなので、しっかりと上位を追いかけていきたいし、それができるチームだと信じています」
実は意識過剰だった20年のタイトル
また気になる佐野の個人成績であるが、打棒に関しては前述したように非常に安定しており、ベイスターズとしては同じ背番号7を背負っていた鈴木尚典以来23年ぶりとなる2年連続首位打者はもちろん、昨年逃した最多安打も狙える状況だ。気の早い話ではあるが、そのことについて言及すると、佐野は慎重に言葉を選び口を開いた。
「じつは昨年、タイトルが掛かっていた終盤、打てなかったらどうしようと勝手に焦ってしまった部分があったんです。平常心を保っているようなコメントを出していましたが、実際のところタイトルを意識し過ぎてしまい、自分で自分を追い込んでしまっていた。そういった経験もあるので、今年は落ち着いて自分に向き合いたいし、とにかくまずは全試合に出場すること。あとは結果として数字はついてくると思っています」
こちらの想像を超える活躍をしてきた昨今の佐野ではあるが、決して超人ではない。昨年は心の乱れもあってか終盤に怪我で離脱し、シーズンをきちんと収めることができなかった。今季は満足いく形で最後までシーズンを乗り切ることを目指し、コンディショニングの見直しを図っている。
「今年は練習と試合の前にウェイト・トレーニングをやっているんです。重いものではなく練習や試合に支障が出ない程度にトレーナーさんと相談しながら」
その意図と狙いを訊くと出てきたのがソフトバンクのベテランである松田宣浩の名前だった。