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〈侍ジャパンの主砲が28歳に〉吉田正尚が語っていた、豪快スイングを「絶対に“フルスイング”と表現しない」理由
posted2021/07/15 11:03
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
〈初出:2019年6月13日発売号「〈初ホームランを語る〉吉田正尚『強く振ればいいわけじゃない』」/肩書などはすべて当時〉
球団史上初の新人から4年連続二桁本塁打。侍ジャパンでも4番を経験した猛牛打線の若き主砲が、プロの壁を乗り越えて放った初アーチの思い出を振り返ってくれた。
今年5月21日の千葉ロッテ戦で、オリックスの吉田正尚は今シーズンの第10号本塁打を放った。吉田自身、「キャンプから取り組んできたセンター方向に、ストレートをしっかり弾き返せた」と納得の一打は、球団史上初の、新人から4年連続二桁本塁打というメモリアルアーチだった。
その記録の出発点は、2016年8月18日だった。
開幕、先発出場・初安打でも「正直ちょっと……」
大学日本代表で4番を務めたドラフト1位ルーキーは、その年、即戦力の和製大砲として期待を集めた。キャンプで脇腹を痛めて出遅れたが、オープン戦最後の2戦で猛アピールして開幕一軍に滑り込み、開幕戦は1番指名打者で先発出場を果たす。4打席目に初安打を記録すると、開幕からの連続安打を6試合に伸ばして新人記録に並び、順調なスタートを切ったように見えた。
しかし、吉田自身の感触は違った。
「正直ちょっと、ホームランは打てそうにないなという感じがありました。ピッチャーに合わせて、当てにいっていたような感覚があったので」
その後、吉田は腰痛で4月24日に登録抹消となるのだが、それが自分の打撃を取り戻すきっかけになったと振り返る。
「ファームでリハビリや調整をしていく中で、自分のスイングを求める時間も作れたことはよかったです」
再登録は8月12日。時間はかかったが、「しっかり振れるようになっていた。バッティングカウントだったら、空振りでもいいから、とにかく自分のスイングをしていく。そういう余裕も少しできていました」と言うように、4月とは違った状態で打席に立つことができていた。
101打席目での本塁打「ギリギリだったんですけど(苦笑)」
そして8月18日の北海道日本ハム戦、3回表1死の場面。2ボールから相手先発・増井浩俊のストレートを捉え、ライトスタンドに運んだ。