甲子園の風BACK NUMBER
〈春の県大会ベスト4〉“東大合格23人”水戸一高が1日練習2時間半で目指す甲子園「野球をやっているから勉強は疎かでいい、とは…」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2021/07/13 06:00
水戸一の練習の様子。部員自ら練習メニューを考えているという
「練習時間は増えないので不要な時間を減らしたい。1分をどう捻出するか。一球入魂にも通じること」
そして絶妙なバランス均衡を探す。
「ボトムアップとか、アクティブラーニングで自ら学ぶことが大事です。必要でやりたいことは選手がその都度、言ってくる。ただ、放任だけでは危険なので、よく、見ていてやらないと」
野球をやっている中学生が減る中で
全校生徒は3年9クラス、2年8クラス、1年7クラスで900人強の生徒が在籍するが、御三家のおひざ元も少子化が進んでいる。10クラスの時代もあったというが来年度は付属中学との兼ね合いもあって6クラス募集の予定だ。
昨年まで水戸桜ノ牧高校の校長をしていた藤田会長が言う。
「水戸も中学校の統廃合が進んでいます。野球をやっている中学生が減っていて、部員が少ない」
それでも幸いにして、飛田穂洲の母校、というブランドは最強だ。堺堀主将は中学3年の時の体験会で決心した。
「選手が中心になってチーム作りをしていて、ここでやりたいと思いました。勉強も野球も頑張りたいと。遠くて通学が難しいとなった時に親も鹿嶋市から一緒に引っ越してくれた」
勉強との両立も水戸一たる柱だ。県内随一の進学校で、2020年度は東大に23人の合格者を出して、野球部からも現役東大野球部員を出した。堺堀君が続ける。
「勉強は大変です、帰宅して9時から12時まで、3時間ぐらいは日々、やりたいんですが」と眠気と戦っている。
一方で監督は、周りが言うよりも本人たちが自覚できている、という。
「提出物は忘れずに、というぐらい。野球が終わった夏以降にガッとペースをあげるのが本校の伝統なので。勉強するから部活は軽くとか、野球をやっているから勉強は疎かでいい、と言い訳にして欲しくない。どっちもきついけど頑張ろうと」
ルーツ校の誇りをどう繋いでいくか
ルーツ校の誇りをどう、繋いでいくかという大命題が課せられている。1年生は入学早々に歴史や郷土学などを学び、OBへのインタビューもするという。
藤田会長は母校の監督を11年間(91年から01年)務めたが、その当時を振り返る(木村監督は01年の入学で教え子)。
「飛田先生は大事な言葉を残してくれました。1年生には入学して直ぐに一球入魂の話をします。字のごとく、1つのことを丁寧にやる。守備範囲は広くなくてもテリトリーに来たら確実にアウトにする。1つのことを愚直にやれと言ってました。一高の生徒なら各々の個性を伸ばして一芸ができれば、自信が持ててその他の未熟な部分もカバーできると」