甲子園の風BACK NUMBER
〈春の県大会ベスト4〉“東大合格23人”水戸一高が1日練習2時間半で目指す甲子園「野球をやっているから勉強は疎かでいい、とは…」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byTakeshi Shimizu
posted2021/07/13 06:00
水戸一の練習の様子。部員自ら練習メニューを考えているという
サードの横でハンドボール、レフトの位置にはサッカー、センターの位置にはラグビー。それらを縫うように陸上部が走っている。ネット裏に監督室のような部屋もないし、照明設備もちょっと控えめで、名門ながら環境は質素なのだ。
「高台の城址公園の端で狭い。お金もないんです」とOB会長は苦笑いした。
一方で木村監督は前向きに捉えている。
「たまに広く使えてフリーバッティングができる時は一球を大事にするので集中できる。ある程度の制限、ストレスは大事かな」
練習時間は長くて2時間半
それは時間の使い方にも言える。練習が始まるのは16時半だ。それまで授業がびっしりと組まれている。全体練習は19時まで。練習時間は多いとは言えない。
それを補うのが密度だ。部員が21人(3年生7人、2年生10人、1年生4人)と少数である。そこに部長、顧問を含め指導者が6人いるので、ハードさと細やかさが行き渡る。例えばシートノックだ。顧問の井坂拓海先生(28歳)が高橋コーチと並んでノッカーを務めた、ある日の守備練習を解説する。
「内野の2つのポジション、4人を受け持って、20分間で1人に50球ぐらいガンガン、打ちました。個々のアドバイスも的確にできる。球際が上手くなった」
短い時間を有効に使う。前日の夜に監督から練習メニューはラインやショートメールで送ってある。共通認識は流れるように、止めないように、だ。
練習の合間、選手の円陣ができる。まず主務の栗林君が発言する。
「シートノック、内容を濃くしよう」
そして、堺堀史也主将が続く。
「内野も外野も声出していこう」
全員の声が大きく一つになった。
「よしっ」
監督は円陣自体が減ってほしいと願うワケ
ただ監督は円陣自体が減ってくればいい、と思っている。