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〈春の県大会ベスト4〉“東大合格23人”水戸一高が1日練習2時間半で目指す甲子園「野球をやっているから勉強は疎かでいい、とは…」
 

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清水岳志

清水岳志Takeshi Shimizu

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posted2021/07/13 06:00

〈春の県大会ベスト4〉“東大合格23人”水戸一高が1日練習2時間半で目指す甲子園「野球をやっているから勉強は疎かでいい、とは…」<Number Web> photograph by Takeshi Shimizu

水戸一の練習の様子。部員自ら練習メニューを考えているという

 石井連蔵は1949年、50年と夏の代表決定戦で敗れて甲子園出場を阻まれた。

「連蔵さんはスラッガーでエースだった。甲子園確実と言われたのに2アウトからエラーで負けたと聞いています。うちは3回、甲子園に行ってるんですが(29、30、54年)、すべて初戦負け。全国に散らばっているOBがたくさんいて校歌を心待ちにしてる」

今春、県大会でベスト4進出を果たした

 藤田さんはこう夢を語るが、水戸一は今年の春、茨城県大会でベスト4に進出して、その期待が高まっている。前回のベスト4は藤田さんが2年生の時で、それ以来、45年ぶりの快進撃だった。

 会長とともに後方支援の実務を担当するのがOB会幹事長の船橋信正さん(52歳)だ。

「地区予選を勝ち抜いて県大会には出られるようになっていたんですが、まず1つ勝つことが目標だった。ひと試合ごと、成長してくれました。

 昨年夏、新チームがスタートした時に木村監督が就任し、あらたに外部コーチにも加わって頂きました。日本一にもなっておられて、その経験も注入してもらっています」

 外部コーチの1人は清水隆弘バッテリーコーチ(32歳)。酒田南で甲子園出場、国学院大では主将を務めた。かずさマジックでは2013年、日本選手権で優勝している。

 もう1人は早大で日本一になった高橋直樹ヘッドコーチ(31歳)だ。自身が水戸一の現役生だった時に筑波大院生だった木村監督が教えに来ていた縁が今に繋がっている。早大の4年時(12年)は大学選手権で3番を打って優勝に貢献している。

 仕事を調整して週に複数回、自宅のある東京から水戸に片道2時間をかけて通っているという。ガソリン代など負担はあるが、それも含めて人生、と後輩へ情熱を注ぐ。

「春の準決勝は勝てた試合でした。負けて申し訳ない気持ちです。僕なんか、何もしてない、学生が頑張ったんです。

 高校生の時、恩師(現日立一・中山顕監督)から様々なことを学びました。母校に何も恩返しができてなかった。今度は自分が後輩に何かを教えていけたらと。今は家族があって仕事があって野球がある。3つを全力で取り組めてやりがいがある」と充実感をさらりと語る。

ほかの部と共有するグラウンドでは

 水戸一のグラウンドは多くの公立校同様に他の部と共有する。それも半端ないほど、入り乱れる。

【次ページ】 練習時間は長くて2時間半

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