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〈春の県大会ベスト4〉“東大合格23人”水戸一高が1日練習2時間半で目指す甲子園「野球をやっているから勉強は疎かでいい、とは…」
posted2021/07/13 06:00
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph by
Takeshi Shimizu
茨城県の県立高校には、今でもナンバーリングされた校名が残っている。水戸一(水戸一高・いちこう)は近代制度下の高校としては県内最古の高校で、その数字を与えられている。創立140年を超える伝統校だ。
徳川御三家の一つ、水戸藩の水戸城の本丸跡地に校舎がある。水戸城では唯一現存する建物の薬医門が校内に移築されている。大河ドラマ「青天を衝け」でロケをした藩校の弘道館はすぐ近くだ。
水戸はアマチュア野球の源流の1つと言っても過言ではない。水戸一出身の飛田穂洲、石井連蔵の2人と水戸商業(すいしょう)出身の石井藤吉郎は早大で監督を務め、3人とも殿堂入りを果たした。
「1年の時に飛田さんからバントの御指導を」
野球部OB会長の藤田知巳さん(61歳)が伝説を教えてくれた。
「『いちこう』と『すいしょう』はユニフォームの色をかけて戦ったことがあるそうです。試合に勝った水戸一は臙脂の早稲田カラーのユニフォームに、負けた水戸商が紫の明治カラーのユニフォームにしたのだと。今でも両校は定期戦をしています」
学生野球の父と言われる飛田は、『一球入魂』という日本野球の根底に流れる言葉を残したことで知られ、学校敷地内に胸像がある。正式な監督はしていないが、外部コーチ的に母校に指導にはきていたようだ。
「全体練習が終わったあと、外野からのワンバウンド返球ができるまで、ノックを何本も打ったと聞いてます」(藤田さん)
木村優介監督(36歳)は子供の頃、祖父との会話の中に飛田の名前が出てきたことを朧げに覚えているという。
「じいちゃんが水戸一で野球をやっていて、1年の時に飛田さんからバントの御指導を頂いたと聞かされました。できるまで選手に寄り添ってくれるとか、野球以外のことでも面倒見が良かったと手記には書かれています」