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コケたのに日本記録!? 順大駅伝監督が語る、男子3000m障害・三浦龍司の「“イレギュラー”への対応力」
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph byAFLO
posted2021/07/07 11:02
途中、転倒するシーンがありながら日本記録を更新した三浦龍司
「コケてから勝負に出たのは正しかった」
成長の要因を長門監督は”判断力の向上“だと見ている。
「レース前には一緒に展開を想定し、動き方をこちらからも指示しますが、実際には集団の中にいる選手にしか分からないこともあります。変化する状況の中でどう動くべきか、いつ勝負を仕掛けるか。その判断が的確だと思います」
三浦も同意見だ。今回のレース後に「コケてから一気に勝負に出たのは判断として正しかったと思います。イレギュラーな対応もできるようになりましたし、今回は1000mから2000mの間で出るところでも出せました」と手ごたえを口にしている。
箱根駅伝に向けたスタミナ養成、クロスカントリーでの練習
ただその判断力も走力と自信があってこそ発揮できるもの。三浦はこの冬を越え、その面も大きく力を伸ばした。初めて挑む箱根駅伝の20㎞へ向けたスタミナ養成を経て、年明けからはクロスカントリーでの練習を中心に行い、引き続きスタミナと脚筋力を強化。一時、ふくらはぎのケガで走れない時期があったが、この間も下肢のトレーニングに励んでいる。
「自分はスパートをかける時、ピッチではなくストライドでいくのですがそれがスッと上がるようになりました。トップスピードへ持っていくための1、2歩でスピードを上げていくのがうまくなったと思います」
三浦は今季を迎えるに当たって一番成長した部分は「瞬発力」だと話す。加えて3000mSCに向けた練習は後輩が後ろにつくことはあっても、たいていは三浦一人で行ってきた。これが自分でレースを動かす力につながっている。
「言うまでもなく走力の向上は感じています。今回も1000mからペースを上げましたが、ここからの1000mのラップが2分45秒ペースくらい。これが今の三浦のリズムであり、このくらいで走ってこそ彼のハードリング技術も生きると思います」
このペースはまさに世界基準。この流れに乗ってこそ、三浦の力はより発揮されると長門監督は話す。前に出ることなく、海外勢の後ろにつけば同じハイペースでもより力を温存できるだろう。そうなればラストスパートのキレも増すに違いない。東京五輪で彼の走りが期待できる理由はまさにここにある。