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コケたのに日本記録!? 順大駅伝監督が語る、男子3000m障害・三浦龍司の「“イレギュラー”への対応力」
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph byAFLO
posted2021/07/07 11:02
途中、転倒するシーンがありながら日本記録を更新した三浦龍司
「世界と戦ううえで必要」と語っていた部分
三浦の成長はまさに右肩上がりの曲線を描いている。タイムの向上だけでなく、レース内容も変化し続けている点も見逃せないポイントだ。2020年7月。8分19秒37の当時日本歴代2位の記録で走ったレースが三浦の東京五輪挑戦へのスタートとなったが、この時は終盤まで他の選手と並走し、力を借りながら進め、最後の1周で仕掛けた。しかし今年5月の東京五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」で8分17秒46の日本記録を樹立した時はスタート直後から先頭に出て、自らペースを作り、最後もロングスパートを決めた。そして今回は1000mまでは様子を見て、あまり速くないと感じるとそこからペースを上げ、最後まで押し切っている。実は1000mから2000mのペースアップは三浦が世界と戦ううえで必要と語っていた部分。そこまでがややスローだったとはいえ、日本一を決める舞台でそのチャレンジをし、成功させた。
「最初の1000mがもう少しペースが上がってもそこからの持続はできると思います」
レース後、三浦自身も自信を得た様子だった。彼の最大の武器はどんなにハイペースで進んでも最後で動きを切り替え、ラストスパートで勝負を決められる点だ。今回見せたように残り1周以上の距離でも150mを切ってからのスプリントまで自由自在に対応するが、その武器を発揮するまでもなくあらゆる展開に対応できるようになった。