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EUROに見る「最新のMFトレンド」 イタリアやイングランドの“伝統スタイル脱却”と田中碧の覚醒に共通するものとは
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byUEFA/Getty Images
posted2021/06/25 17:05
ジョルジーニョとグリーリッシュ。2人のような中盤のプレーヤーが現代サッカーの潮流を象徴している
「僕は毎日、フットボールを楽しんでいるし、そんな日々を愛している。だから重圧なんか、まったく感じないよ」と試合後の会見で淡々と話したグリーリッシュは、やや慎重に過ぎると評されるチームのスタイルについても言及した。
「チームとしては、もう少しポゼッションを高められると思う。そのために、自分は少し下がって、ボールを呼び込むようにしていた」
フットボール発祥地の人々は今、この堂々としたクリエイティブな才能を、ポール・ガスコインに重ね合わせている──欧州選手権で最後に4強入りした96年大会の中心選手だ。6月29日にロンドンで予定されているラウンド16の相手は、そのEURO96準決勝で屈した因縁の敵、ドイツだ。トニ・クロースやイルカイ・ギュンドガンと対峙する中盤の争いが、この試合でも鍵を握りそうだ。
新世代の中盤が各国に……田中碧にも同じ匂いが
そのほか、レナト・サンチェス(ポルトガル)、ポール・ポグバ(フランス)、フレンキー・デヨング(オランダ)、ケビン・デブライネ(ベルギー)、ルカ・モドリッチ(クロアチア)、ペドリ(スペイン)、オレクサンドル・ジンチェンコ(ウクライナ)ら、決勝トーナメントに残ったチームには、いずれも優れたプレーメーカーが存在する。
また敗退したスコットランドも、20歳のセントラルMFの逸材、ビリー・ギルモアが出場した試合としなかった試合では、全体の出来がまったく違った。決勝トーナメントでも、各代表のミッドフィールドの質が、結果を大きく左右しそうだ。
これがエリートレベルの最新のトレンドだとすれば、日本も乗り遅れてはいない。
Jリーグで敵なしの川崎フロンターレでは、田中碧がボランチとして絶大の存在感を放っていた。欧州行きが秒読みとされる22歳は、東京五輪での活躍も期待される。ブンデスリーガで飛躍的に成長した遠藤航と共に中盤を支配できれば、メダルも見えてくるか。