球体とリズムBACK NUMBER
EUROに見る「最新のMFトレンド」 イタリアやイングランドの“伝統スタイル脱却”と田中碧の覚醒に共通するものとは
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byUEFA/Getty Images
posted2021/06/25 17:05
ジョルジーニョとグリーリッシュ。2人のような中盤のプレーヤーが現代サッカーの潮流を象徴している
まさしくルネサンスを遂げているこのアッズーリが今大会で頂点に立ったなら、最大の殊勲者のひとりは中盤の新たなリーダー、ジョルジーニョだったと記憶されることになるはずだ。ブラジル出身の29歳のレジスタが、新生イタリアのリズムを司り、全体を動かしている。
「アズーリは、チェルシーに似ている」
EURO2020の直前にチェルシーの一員としてチャンピオンズリーグを制した彼は、開幕戦でトルコに3-0の快勝を収めた後、伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』にこう語った。
「このチーム(イタリア代表)は、僕の所属するチェルシーに似ている。若手からベテランまで皆ハングリーで、勝利への意欲も旺盛だ。代表でも同じこと(欧州制覇)を達成したいね」
ポゼッション志向の攻撃的な現代表は、守備時には青いシャツに刻み込まれた伝統の堅守も披露し、グループAを3戦3勝、7得点0失点の完璧な成績で首位通過。ここまでのベストチームのひとつは、オーストリアとのラウンド16を皮切りに、13大会ぶり2度目の優勝を目指す。
イングランドでもキック&ラッシュは今や昔
イタリアと同様にグループステージを無失点で切り抜けたもうひとつのチームが、イングランドだ。
このスリーライオンズもまた、キック&ラッシュと呼ばれたかつてのスタイルから脱却している。イタリアほどテンポよくパスを回すわけではないが、ここの中盤にもボールプレーヤーが置かれている。リーズ・ユナイテッドでマルセロ・ビエルサ監督の薫陶を受けるカルバン・フィリップスの所作からは、恩師の指導の色が如実に見て取れ、長くて正確なフィードだけでなく、時機を心得た攻め上がりで好機を演出している。
またファンが起用を待望したジャック・グリーリッシュは、グループ3戦目のチェコ戦で初先発すると、ナンバー10の位置から抜群のスキルと創造性を顕示。ルックスにもパフォーマンスにも華のある25歳は、洒脱なクロスでラヒーム・スターリングの決勝点をお膳立てした。代表キャップはまだ1桁、主要大会は初出場にもかかわらず。