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フロンターレ鬼木監督に聞く“J1史上最速100勝”「勝っていくチームはこうだよなっていうのが僕のなかにある」 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byGetty Images

posted2021/06/25 11:02

フロンターレ鬼木監督に聞く“J1史上最速100勝”「勝っていくチームはこうだよなっていうのが僕のなかにある」<Number Web> photograph by Getty Images

J1史上最速100勝を達成した鬼木監督。今季はACL制覇も目指す

最高のシーズンを送ると次が難しい

 鬼木にとって選手たちの成長を感じ取ったゲームになった。

「鹿島は調子を上げていましたから、簡単な試合にはならないと思っていました。少し前だったら引き分けでも仕方ないかなって雰囲気が出たかもしれないですけど、今はそうじゃない。勝ち続けたいんだという話を選手たちにしているなかで、目の色を変えてピッチに入ってくれた悠がああいう形で点を獲ってくれた。試合が終わった後に選手には『こういうゲームをするためにみんなは普段頑張っているんだよ』と伝えました。自分としても心にグッと来るものがあってそういう(シビれるゲームという)表現になったのかな、と思います」

 試合終了のホイッスルが鳴ったとき、ピッチに大の字になった選手もいた。持てる力をすべて出し尽くして勝利をつかんだことが彼からすれば一番の誇りだった。

 最高のシーズンを送ってしまうとどうしても次が難しくなるものだ。

 2020年シーズンのフロンターレは史上最速(4試合を残しての優勝)、最多勝ち点(83)、最多得点(88)、最大得失点差(+57)と記録尽くめでJ1を制した。ぶっち切りの後を、どうするか。気の緩みが出てこないか、モチベーションは持続できるのか。操縦法を一つ間違ってしまえば、チーム力が高まっていかない可能性がある。全員がその背中を見てきた大黒柱、中村憲剛の引退も懸念材料と言えばそうだ。

「監督がそこを目指さなかったらチームにこの先がない」

 2021年シーズンをどう入っていくかがミソだった。鬼木もそこを気にかけていた。

「憲剛のところで言えば、自分からアプローチする必要はないと思っていました。去年のシーズン中に分かっていたことだし、選手たちの覚悟も決まっていましたから。憲剛さんが抜けたからダメになったと言われたくない、と。憲剛さんの分まで自分がやらなきゃいけないっていう話は(選手から)聞いていました。

 自分がアプローチしなきゃいけないのはやっぱり昨年の成績のところですよね。もの凄い数字を叩き出してくれて、周りからもいろいろと称賛されたので、これはどうしたものかな、と(笑)。今シーズン、ただ単に勝っていくだけではチームも選手も昨年を超えていく実感を持てないんじゃないかと思って、数字的なものを指標にしようと考えました。
 超えられるかどうか難しいところではありますけど、監督がそこを目指さなかったらチームにこの先がない。だから目指すものを明確にしなきゃいけない、そして覚悟を決めなきゃいけない。でも思ったんです。(4-3-3など)カチッと決まってから1年しか経っていない。まだ積み上げている段階のはずなのに、(昨年の)数字に惑わされているところがあるなって。普通じゃない数字だし、選手にも『大変だとは思うよ』と話をしましたけど、可能性を信じて、選手とチームの成長になると信じてやっていくしかない、と

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