4つの引き分けの次の試合はきっちり勝利

　名古屋に2連勝して勝ち点差を広げたのに、自分の采配がどう影響したのかが引っ掛かって仕方がない。ならば選手に直接聞いちゃえばいい。自分で考えるよりも効率がいいし、情報も正確だ。

「選手からは『今までもそういう使い方ありましたよ』『（意図は）伝わっていたし、別に問題は感じなかったですよ』とか言われて、確かに前にもあったよなって思い出したんです。じゃあ交代策だけじゃなくて、ゲームプランで一致できていなかったところが（2失点した）要因にあるんじゃないかとか、違うところでの分析も必要だと感じました」

名古屋戦での鬼木監督　(C)J.LEAGUE

　一事が万事、こうである。

　何か気になったら、ピッチで戦う選手たちの反応も把握したうえで課題の芽をつぶしておく。だから彼らは強い。今シーズンの川崎はここまで負けなしで4つの引き分けを記録しているが、その次の試合はきっちりと勝利を収めている。最速100勝を挙げた鹿島戦の前節も湘南ベルマーレに引き分けていた。課題を持ち越さないことが、勝利の連鎖につながっている。

「勝負に対するアンテナみたいなものは、ずっと張っているつもりです。鹿島にいたときに感じたことですが、勝っていくチームはこうだよなっていうのが僕のなかにあるので。引き分けたゲームの後は、自分のなかで悔いが残ることがよくあります。もっとこうだったなって、フォーカスしやすいから次に活かしやすいところはあります」

　勝負に対する鬼木のアンテナは、広範囲かつ感度が高い。

　それを示す彼らしいエピソードがあった――。

（後編に続く）