「説明責任」を大切にしている

　チームに提示した目標が「2020年超え」だった。

　これまでの記録より9ポイントも高い83という最多勝ち点の先を目指して。これを超えていけば、自ずと2連覇は転がり込んでくる。まだ完成形などではない。今はまだその途中だと強調した。シーズン前に「思い」を共有するところから始めていた。

　鬼木のマネジメントで興味深いのは、「説明責任」を大切にしていること。

　2021年シーズンのキャプテンには2年連続で谷口彰悟、副キャプテンには登里享平、脇坂泰斗、レアンドロ・ダミアンの3選手が就任した。鬼木自身も現役時代に川崎でキャプテンを務めており、指揮官に直接その意図を説明してもらったほうが仕事は当然やりやすくなると理解している。

川崎・谷口彰悟（左、2016年撮影）　(C)Kiichi Matsumoto

　個々にコミュニケーションを取るのは当たり前かもしれないが、納得して引き受けるかどうかはあくまで選手判断。昨年、谷口を初めてキャプテンにする際には中村や小林ら年長者にも意見を求めている。自分とコーチングスタッフだけが分かっていればいいということには絶対にしない。全体で共有を図るには全体で物事を進める。キャプテン人事一つとっても鬼木のポリシーがのぞく。

　このマネジメントには続きがあった。

「役職があろうがなかろうがチームに貢献してくれる」

　昨年まで副キャプテンを務めてきた大島僚太が今回外れるとあって、ここも直接、本人に説明している。

「自分が監督をやり始めたときから副キャプテンをやってくれていて、役職があろうがなかろうがチームに貢献してくれる姿勢は分かっているつもりです。本人も『変わらずやっていきます』と言ってくれました。あと僚太のことで言えば、今年はもう少し自分のところに集中させてあげたいという考えもありました」

　これは彼が度々ケガで離脱したことを踏まえての配慮でもあった。

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