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ロッテの「逆転へ導く11番」佐々木千隼…吉井コーチにセットアッパー転向を決断させた絶品スライダーと“独特のセンス”とは?
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2021/06/09 17:03
セットアッパーとして存在感を発揮している佐々木千隼。昨日、誕生日を迎えて27歳になった
佐々木千自身にも、ここまでの投球を分析してもらった。まずは誰もが評価をするスライダーについて。
「大学時代はもうちょっと曲がりも小さくて、スピードも速くなかった。独学で握りをちょっと変えてから今の感じになった。人差し指をボールの縫い目にかけて、人差し指で押し込む感覚。スライダーでファウルをとれるようになったのは大きい。それでストライク先行の投球が出来るようになった」
ここまでのピッチングに関しても充実感が漂う。
「まだまだな部分はありますが、充実しています。狙いすぎなくなったこともいい方向に来ている。ボール、ボール、ボールとなると流れが悪くなる。いいところに投げると考えずにポンポン投げることを意識している」
「ドラ1」のプレッシャーと怪我
大きな期待をかけられてプロ入りをしたが、その後の道のりは紆余曲折だった。1年目の春季キャンプでは連日、マスコミの注目の的となった。
本人は当時の事を「ドラフト1位だから、もっと頑張らないといけない。これでは駄目だと、自分で自分をただ苦しめていた。結局、どんどんマイナス思考になっていった。メディアも沢山いて、気負っていた。今思うとなんであんなに追い込んで悩んでいたのかなあと思う。もっと気楽にやればよかった」と振り返る。
気負った投球に襲い掛かる怪我。苦しい日々だった。それでも怪我をしたことで学べたこともある。肩のトレーニング方法やケアをしっかり見つめ直し、肩の状態は徐々に回復。今は万全の状態にある。
「痛めた事で学んだ。色々な人と出会い、話を聞き、自分の身体を見つめて知る事が出来たと思う」
試合前には入念にストレッチやケアを行い、試合後も夜、寝る前まで入念に繰り返す。今までにはないほどしっかりと手入れを行い備えることで肩のコンディションは見違えるほど良くなった。
安定感抜群のピッチング。テンポいい投球で試合の中盤を支配する。ビハインドの場面で逆転が生まれるのは決まって佐々木千が投げた後であることは決して偶然ではなく必然。その投球がチームに勢いと活気をもたらしている。
過去4年間、苦しみ悩み抜いた分、今の飛躍がある。背番号「11」はキレのあるストレートと独特の横に曲がるスライダーを武器にマリーンズを勝利に導いている。その投球は苦労人だからこその渋さがある。