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初めて“メッシがいないチーム”でCL優勝なるか… 進化するグアルディオラの戦術は“サッカーの偶然性”をも支配する?
posted2021/05/28 17:01
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
男の嫉妬ほど醜いものはないと言うけれど、どうにもやっかみが止まらない。
マンチェスター・シティをクラブ史上初のチャンピオンズリーグ(CL)・ファイナルへと導いた指揮官、ジョゼップ・グアルディオラが、眩しすぎて、憎らしい。
4つ年下の世界的名将にこんな感情を抱くのは、彼が50歳を過ぎてもなお、そして数えきれないほどの栄光を手に入れてもなお、探求心と向上心の塊のような生き方をしているからだろう。
夜ごとグラスの酒に愚痴を沈めるしか能がない中年男からすれば、どこまでも貪欲に進化を求め続けるペップは、いつしか羨望を通り越して卑しくも妬みの対象となった。
今から12年前、バルセロナのトップチームを率いて1年目にトレブル(3冠)の快挙を成し遂げた時は、とんでもない若手監督が現れたと、そのボール保持を前提とした流麗なフットボールの操舵人に、あっけなく魅了されたものだ。
私は多くの人が思っているようなロマンチストではない
在任4年間で、実に14ものタイトルをバルサにもたらしたペップは、その後ドイツのバイエルン・ミュンヘンでも、そして現在のシティでも、常にトロフィーとともに歩み続けてきた。シティの監督に就任して5年目の今季も、序盤戦こそ苦しんだものの、昨年末から連勝街道をひた走り、2シーズンぶり3度目のプレミアリーグ制覇を果たしている。
ペップを小憎らしく感じるようになったのは、そうやってたらふく美酒を味わっても、決して正気を失うことがないからだ。可愛げとも言っていい人間らしい弱さを、酔いに任せて表に出すことがないからだ。彼なら優勝を決めたその夜だって、ビデオルームにこもって次なる対戦相手の研究をしかねないだろう。
「私は多くの人が思っているようなロマンチストではない」
勝利に一途なリアリストの表情は、年々その彫りを深くしている印象がある。
人気ユーチューバーのように、次から次へと新たな戦術トレンドを生み出していくそのイノベーターぶりも、古い概念に縛られた石頭を大いに焦らせる。ペップが一歩踏み出すたびに、置いてけぼりを食ったような気持ちにさせられるのだ。