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柳田悠岐は“脱スパルタの少年野球育ち”… 「楽しむことが大前提。バスケの大会でも優勝してました」恩師が明かす秘話
text by
花田雪Kiyomu Hanada
photograph byNanae Suzuki
posted2021/05/05 11:02
少年時代から“のびのび野球”で育ったという柳田悠岐
バスケの大会で優勝していた!?
少年野球とはいえ、全国には勝利至上主義と言えるような厳しい指導、選手の個性をつぶしかねない練習を課すチームは決して少なくない。そんな中、小柄で非力ながら現在と同じ思い切りのよいスイングをする柳田少年をへたに「いじらなかった」ことは、結果としてのちの成長にも大きくつながったのかもしれない。
「チームはもちろん、地域の方針として野球だけでなく子どもたちの運動能力そのものを上げようという取り組みはずっと続いています。うちも、冬場はほとんどボールを握らせずに体力トレーニングをメインにやっています。クラブでスポーツテストも実施していて、どんな能力が高くてどんな能力が不足しているかもわかるようになっています」
野球だけうまくなればいい――。そんな旧態依然の指導は存在しない。
「少年野球は秋になると6年生が引退します。ただ、中学校入学まではまだ4カ月ほどある。やんなの代もそうでしたが、野球を引退した後は小学校のバスケットボールチームに入ってプレーしていました。基礎体力を重視したトレーニングを続けていたこともあって、バスケットボールでも大会で優勝したり、しっかりと結果を残していましたよ」
嬉しそうに語る山本さんが見せてくれたのは、バスケットボールのユニフォームに身を包んだ柳田少年とチームメイトの写真だった。欧米では当たり前になっているジュニア世代の競技の掛け持ちだが、日本ではほとんど浸透していない。柳田少年の場合、厳密には掛け持ちとは言えないが、野球以外の競技も経験し、スポーツそのもののすばらしさを実感できたことも大きかったかもしれない。
元気なお母さん、寡黙で陰から見守るお父さん
子どもが野球を続けるうえで家族のサポートは不可欠だ。少年野球では現在、この『家族の協力』が『負担』と取られ、野球離れの要因のひとつとも考えられているが、柳田少年の場合は家族の全面的なサポートが大きかったという。
「お母さんはとにかく元気な人でね。応援にもよく来てくれたし、子どもたちのサポートも積極的にやってくれた。やんなの性格は母親に似たんじゃないかな。逆にお父さんは体は大きいけど寡黙なタイプで、試合も見には来るけど陰からこっそり見守るタイプ。それは、中学、高校、大学と変わらなかったんじゃないかな。広島経済大学時代に応援に行ったことがあったんだけど、お母さんはバックネット裏で他のお母さんたちと一緒になって先頭きって応援している。挨拶がてら『今日は、お父さんは?』と聞くと、『どっかにおるよ』ってね(笑)。あとで聞いたら、レフトスタンドの後ろのほうでこっそり応援していたらしい」
現在の柳田悠岐は、インタビューなどでもどこか人を食ったようなつかみどころのない返答をすることが多い。筆者も過去の取材でそれを感じたひとりだ。