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強豪で箱根駅伝を目指すも挫折…大学で“飲みサー”に入ったランナーが「人気ラン系YouTuber」になるまで
posted2021/04/07 06:01
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Tomosuke Imai
フルマラソン2時間17分37秒という驚異的なタイムを持ち、2019年には富士山マラソン(2019年、男子25~29歳)、湘南国際マラソンで優勝している市民ランナーにして、登録者数1万5900人(4月6日現在)YouTubeチャンネル『ランニング食堂』を運営している“ランチューバー”としても活躍する山田祐生さん。実は、陸上の強豪高校出身で箱根駅伝を目指しながらも、怪我をきっかけに「走ることが嫌いになった」と、陸上から離れていた時期がある。
それから25歳で再び走り始め「ランニング系ユーチューバー」になったのはなぜか? 本人にお話を伺った(全2回の2回目/#1より続く)。
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ランニング系ユーチューバー・ランニング食堂こと山田祐生さんが開設しているTwitterアカウント(https://twitter.com/112233barreal)には、こんな自己紹介文が掲載されている。「強豪高校きつすぎて怪我してもないのに怪我したアピールで2/3は嘘リハビリ→大学サークル飲み会要員→25でもう一度走りだす」。異色の経歴が目を引く。
夢は「箱根駅伝を走る」 推薦で強豪高校に進学
「漫画『ホイッスル!』の不破大地に憧れてサッカーのGKを目指していたので、中学ではサッカー部に入ろうとしたんです。でも、サッカー部がなかったので、柔道部に入ろうと思ったんです。GKになるために受け身が必要なので。でも、親に止められました。
GKやるなら陸上部に入った方が近道だと親に言われて、陸上で短距離をはじめたんですが、なかなか結果が出なくて弟の誘いを受けて長距離に転向したんです。そこから結果が出始めて、中3の時には佐賀県で4、5番に入るぐらいになれて。中学卒業前にはGKから『箱根駅伝を走る』に夢が切り替わりました」
佐賀県の大会で上位に入った山田さんには、陸上の強豪校から声がかかった。県内には都大路の常連校である鳥栖工業、長距離に強い唐津工業など強豪校がいくつかあるが、スカウトされたのはそのうちの1つである白石高校。「箱根駅伝を走る」という目標にぐっと近づいたかに見えたが、山田さんはその高校3年間を「僕にとって闇でした」と振り返る。
走ることから逃げた高校時代
「中学を卒業した春休みに高校の春合宿に参加したんです。でも、初日に頑張り過ぎて腸脛靭帯を痛めてしまって。いきなりでしたし、かなりショックでした。腸脛靭帯が治ったのが7月頃だったんですが、高1って伸び盛りでみんなすごい勢いで成長するんです。僕も遅れた分を取り戻そうと頑張ったんですが、差は開く一方で……。段々、練習も『無駄にキツいだけ』と感じるようになって、走るのが嫌になってしまった」
――練習は、どうしていたんですか。
「練習をやりたくないので、監督にいかにバレない嘘をつくかってことばかり考えていました。当時はペース走でキロ4分だったんですけど、ジョグが4分20秒ぐらいなのでキロ4分のペース走がキツいってことはないんです。でも、声を上げてキツそうにして走っていましたね(笑)。もちろんそれじゃダメで監督に怒られるんですが、『気持ちがついていかないんです』『足が痛いんです』『貧血かもしれません』とか理由をつけて。できるだけ走ることから逃げて、補強と歩くことだけやっていた3年間でした」
――そこまで辛い思いをするならいっそ退部した方がラクになれたのでは。