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強豪で箱根駅伝を目指すも挫折…大学で“飲みサー”に入ったランナーが「人気ラン系YouTuber」になるまで 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byTomosuke Imai

posted2021/04/07 06:01

強豪で箱根駅伝を目指すも挫折…大学で“飲みサー”に入ったランナーが「人気ラン系YouTuber」になるまで<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

実は陸上の強豪高校出身で、「箱根駅伝を目指していた」という“ランチューバー”山田祐生さん

 翌2020年のびわ湖毎日マラソンでは2時間18分を出して自己ベストを更新し、20分切りを果たした。市民ランナーで2時間20分を切ること自体、驚異だが、兄弟で切磋琢磨してタイムを上げていくプロセスも素晴らしい。

初めて投稿した動画の再生回数は「5回」

――再び走り始めて、それからユーチューブを始めたきっかけは?

「勤めていた会社のPRを動画でできないかなと思って、試作として個人的に始めたのが最初でした。当時は、動画マーケティングという言葉が流行っていて、自分に面白い企画が作れれば、会社の公認でやらせてもらえるようになるかなと(笑)。食品メーカーだったので、取り扱っている商品を使って“ランナー目線でランニングと健康のための料理を作る”というコンセプトでした」

――今とだいぶ違いますね。

「そうなんです。再生回数は5回ぐらいで、ほぼ自分みたいな感じ(苦笑)。伸び悩んでいるときに、同じくYouTube配信を始めた弟から『ランニング風景の方が反響良いよ』と教えてもらったんです。そこから徐々に練習やレースの動画を増やしていきました」

 こうして迫力あるレース動画や本格的な練習風景を配信し続けて、気づけばチャンネル登録者数は1万5900人を超えた。

「僕は箱根駅伝を目指して挫折した人間なので」

 近年、ランニング系ユーチューブ界は盛り上がりを見せている。青学大OBで初の箱根駅伝総合優勝・2連覇に貢献した神野大地や東洋大OBのTKD PROJECT、帝京大OBで箱根出場経験者のたむじょーなど、大学陸上部出身者や箱根駅伝経験者、実業団に所属している現役アスリートが次々に動画配信を始めている。まさに“激戦区”だ。

――ランチューバー業界も“激戦区”になりつつあります。強豪大学出身者や箱根経験者、現役アスリートも動画配信を始めている現状をどう見ていますか?

「TKD PROJECTさんやたむじょーさんとか大学陸上部OBの人にはやっぱり委縮しちゃいますね(笑)。僕は強豪高校出身と言えど、一度陸上を辞めて、大学の陸上サークル出身、しかも飲み要員ですし……。向こうはガチ勢で、僕らは何をやってもどこかヌルいんだろうなって勝手に思ってしまうんです」

――それだけ「箱根駅伝」という存在が大きいということでしょうか。

「そうですね。箱根駅伝を目指してちゃんと走れた人がいる一方で、僕は箱根駅伝を目指して挫折した人間なので。あと、高校の時からの『強い(速い)人がすごい』という感覚がいまだにあるんだと思います」

――とは言え、2時間20分を切るタイムはすごい記録ですよね。大学陸上部出身者や実業団に負けたくないと思うことはありませんか?

「うーん……『負けたくない』というよりは『勝ってみたいな』と思いながら練習している気がします。やっぱり強い人たち相手に『勝ちたい!』なんてことは、まだ言えなくて(笑)。でもなんか勝てたらきっと楽しいだろうなあって考えて走ってます」

【次ページ】 “速い”市民ランナーが増えているのはなぜ?

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山田祐生

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