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マイナーリーガーの給料アップ、女性の幹部起用に「インディアンス」名称変更…米野球界に広がる“社会的変革の波”
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGettyImages
posted2021/03/31 17:01
開幕投手を務める前田健太(左)とダルビッシュ有(右)。日本人投手2人が選ばれたのは4年ぶりだ
削減されたチームの幾つかは独立リーグに参与するか、自然消滅するようになってしまうが、独立リーグの幾つかは「ドラフトから漏れた若手選手の発掘の場」としてMLBと提携することになった。同リーグは以前からMLBにとってリクルートの場の一つであり、両者の関係がより緊密になるということは、ドラフトから漏れた若者たちにとって大きなチャンスとなる。
米国の独立リーグでプレーすることは、米国だけではなく、日本プロ野球のドラフトから漏れた日本のアマチュア選手たちにとっても、一つのチャンスになるかも知れない。以前のコラム(「マイナーを目指す」2人の日本人。高校で芽が出ず、アメリカに渡って。)でも取り上げたように、独立リーガーたちにとっての当面の目標は、「独立リーグで活躍してMLB球団とマイナー契約を交わすこと」である。その中には立命館高校出身の赤沼淳平投手のように、米国の大学野球からMLBを目指している選手たちも何人かいる。彼らはある程度の学力がなければ大学野球の試合に出場できないため、自然と語学力も高い。
そういう若者は、「MLBでプレーすること」以外にもう一つの可能性を秘めている。英語が堪能であれば、たとえ米国でプロ野球選手になれなくとも、通訳はもちろん、(もちろん、それなりのトレーニングは必要だが)スカウトを入り口とする球団編成部への就職を目指すこともできるからだ。米国の大学に通えるぐらいの英語力を持っていれば、(訓練次第では)野球以外の米系企業に就職するチャンスもあるはずで、これからそんな人生設計を持った日本の若者が増えても驚くようなことではないだろう。
積極的な女性起用と「インディアンス」名称変更
そんな「未来の可能性」は、日本人女性にもある。昨年、マーリンズが女性のキム・アング氏をゼネラル・マネジャー(GM)に就任させたり、ジャイアンツがアリッサ・ナッケン氏(元ソフトボール選手)を女性コーチとして招聘したり、各球団で女性の雇用機会が急増している。
ならば、統計分析に長けた米国の大学卒の日本人女性が、MLBチームの編成部門を束ねたり、米国で弁護士資格を取得して年俸調停や契約更改の交渉で手腕を発揮するような役職に就くことも想像に容易い。コーチングに充分な英語力さえあれば、ソフトボール日本代表の女性がMLBにコーチとして招聘されたって、何ら不思議ではない時代である。