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「マイナーを目指す」2人の日本人。
高校で芽が出ず、アメリカに渡って。
posted2019/09/13 19:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Katsushi Nagao
8月半ばの蒸し暑い午後、アメリカ合衆国中西部の大都市シカゴから、車でおよそ30分ほど南へ行った町クレストウッド。アメリカのどこにでもあるような郊外の小さな町の片隅に、その野球場=スタンダードバンク・スタジアムはあった。
アメリカでは珍しく内外野すべて人工芝で、天然芝のグラウンドなら土であるはずの塁間部分がこげ茶色にペイントされているさまは、まるで日本の野球場のようだった。
違っているのはマウンドで、その傾斜にまでこげ茶色の人工芝が貼られている。
「投げにくいっすよ」
ビジターチーム、シャンバーグ・ブーマーズの赤沼淳平はそう言った。キリッとした眉毛と顎の無精髭のセットが逞しい。
「アメリカの大学にはこういうところもあるけど、うちの球場は内外野が天然芝なんでマウンドも当然、土ですから」
「なんとかマイナーに入り込まないと」
京都の立命館高校からアメリカ西海岸の短期大学に進学した赤沼は、そこで語学と野球のスキルを同時に磨き、奨学金を得てテネシー州のリー大学に編入した。きちんと卒業して運動科学の学士号も取得している。
大学時代は先発投手としてノーヒッターを記録するなど活躍し、卒業後にメジャーリーグのドラフトを待ったが指名されず、そこで仲介者を通じてアメリカン・アソシエーション(AA)というインディペンデント=独立リーグのサウスショア・レールキャッツのトライアウトを受けて合格した。
今季の大部分はそこで救援投手として過ごし、トレードでフロンティア・リーグのブーマーズに移籍した。ちなみにレールキャッツもブーマーズも、内外野すべて天然芝の美しい野球場を本拠地としている。
「ここでプレーするのは楽しいんですけど、もう24(歳)なんで、この1、2年が勝負だと思ってる。結果を残して、なんとかマイナーに入り込まないと」
彼が言う「マイナー」とは、今いる場所「独立リーグ」のことではなく、メジャーリーグの傘下にあるマイナーリーグのことだ。