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甲子園まで徒歩3分のはずが30分?…野球ファンもたまに間違う駅「JR甲子園口」から甲子園まで歩いてみた【センバツ】 

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鼠入昌史

鼠入昌史Masashi Soiri

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posted2021/03/26 11:03

甲子園まで徒歩3分のはずが30分?…野球ファンもたまに間違う駅「JR甲子園口」から甲子園まで歩いてみた【センバツ】<Number Web> photograph by Masashi Soiri

事情を知らない野球ファンもたまに間違える?JR甲子園口。ここから甲子園まで歩いてみる

 実は、甲子園という町の本質はこういった高級住宅地である。

 甲子園の地名の由来はもちろん甲子園球場だ。阪神甲子園球場が完成した1924年が甲子の年だったことから名付けられたものだ。そしてこの甲子園球場建設に先立って、阪神電鉄は武庫川支流の枝川をまるっと埋め立てた。次いで一帯に住宅地や行楽地を建設、そのひとつが阪神甲子園球場だったというわけだ。こうした経緯から、そのまま阪神電鉄による新興住宅地は“甲子園”と呼ばれるようになって、地名として定着した。大正から昭和初期にかけて、相次いで阪神間に誕生した高級住宅地・西宮七園のひとつで、いわば阪神間モダニズムの代表格といえる町並みだ。阪神電車といえば庶民派のイメージも強いが、こうして高級住宅地も築き上げてきたのである。

 で、この高級住宅地としての甲子園の中心を通っている目抜き通りが甲子園筋だ。もとは埋め立てた枝川が流れていた場所にあたる。まるで北海道のようにまっすぐできれいな道なのは、このように“人為的”に作られた町の背骨だから。そして、町と球場の整備が終わった1926~1928年にかけては阪神電鉄の路面電車「甲子園線」がこの道の上に開業した。いわば甲子園という町の地域輸送の担い手である。甲子園線は1975年に廃止されたが、その名残で今でも甲子園筋を“電車道”と呼ぶ人もいるという。

ローソンがタイガースデザインに

 甲子園口駅から甲子園球場までは、この高級住宅地のど真ん中を貫く“電車道”を延々と歩かねばならない。そんな道を20分ばかり歩くと、先に高架の線路が見えてくる。これがお待ちかねの阪神電車。ちょうど甲子園筋と交わるところに甲子園駅がある。

 その少し手前からはようやくタイガースらしさも顔を出し、たとえばコンビニのローソンがタイガース仕様のデザインになっていたりして、場違い感に苛まれている旅人を安堵させる。そうして阪神電車の高架をくぐれば……いよいよ阪神甲子園球場である。

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