濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER

【軍事クーデターで禁止に】「失神しても目を覚まさせて続行」ミャンマーの危険すぎる格闘技“ラウェイ”って?  

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

PROFILE

photograph byNorihiro Hashimoto

posted2021/03/24 17:00

【軍事クーデターで禁止に】「失神しても目を覚まさせて続行」ミャンマーの危険すぎる格闘技“ラウェイ”って? <Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

ミャンマーの格闘技「ラウェイ」はその過激で過酷なルールが大きな特徴だ

“顔面ボコボコ”、“流血上等”

 筆者がラウェイを初めて取材したのは2005年9月11日のこと。長崎での格闘技イベントの中で、ミャンマーvs日本の対抗戦としてラウェイの公式戦が2試合組まれた。1試合は引き分け、もう1つはミャンマーの強豪選手ロン・チョーの勝利だった。ロン・チョーは『迷子になった拳』にもジムのコーチとして登場する。

 この時に感じたのは“過激ルール”での闘いにも技術や創意工夫があるということだ。日本人選手は打撃をかわして投げを狙う。投げられたミャンマーの選手はマットに叩きつけられる瞬間、相手の首を抱え込んでダメージを与えようとする。

 倒れた相手を殴ってもいいMMAが野蛮なだけの闘いではないように、ラウェイもただのケンカファイトではなかった。と同時に「これはメジャーになったり一般に広まったりはしないだろうな」とも素直に思った。

 簡単に言えば“顔面ボコボコ”、“流血上等”の闘いをわざわざやりたがる日本人選手はそう多くないだろうということだ。よほどの名誉やファイトマネーが得られるのなら別だが、ラウェイはそうした環境にもない。あるのは、強いて言えば“格闘浪漫”のようなものだけだ。

闘い抜けば「ドロー」のルール

 規定のラウンド数を終えると判定なしで引き分けになるルールも、世界(ミャンマー国外)に発信するスポーツとしては不向きに感じた。ボクシングは微差でもポイントをつけ、K-1には延長ラウンドがある。たとえわずかな差であっても“勝ち負け”を決めるのが今の格闘技だ。選手たちはその中で紙一重の攻防を繰り広げる。いかにジャッジを味方につけるかも“強さ”のうちだ。

 ところがラウェイは違う。一方が圧倒的に攻めていても、ダウンを奪われても、とにかくフルラウンド闘い抜けばドローだ。今田監督に説明してもらった。

「たぶんミャンマーと他の国では、強さとか勝敗に対する感覚が違うんだと思います。ラウェイでは、負けた選手にもメダルが贈られるんですよ。勝者には金メダル、敗者には銀メダル。“リングに上がった時点で、その選手には讃えられる価値がある”ということでしょうね。

 ラウェイのKOには“嫌倒れ”が多いとも聞きます。脳が揺れてダウンするというよりも、痛みに耐えきれなくて倒れる。つまりギブアップですよね。時間切れまで闘ったら引き分けというのは“最後までギブアップしなかった人間は勝者なんだ”ということなんだと思います」

【次ページ】 対戦相手を罵倒したり唾を吐くのはNG

BACK 1 2 3 4 NEXT
#ラウェイ

格闘技の前後の記事

ページトップ