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【軍事クーデターで禁止に】「失神しても目を覚まさせて続行」ミャンマーの危険すぎる格闘技“ラウェイ”って?
posted2021/03/24 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
ミャンマーの格闘技ラウェイは“最も過激で過酷なルールの格闘技”と言われる。ポイントは人気でも競技人口でもスター選手の存在でもなく、まずルールだ。
打撃格闘技で顔面へのパンチ攻撃が認められるラウェイだが、選手はグローブを着用しないのである。そのためかつては“素手のムエタイ”といった表現もされた。
しかし実際には素手ではない。素手でもなくグローブも着けないとはどういうことか。拳を保護するためのバンデージは巻くのだ。その上をテーピングでガチガチに固めた拳は凶器と言っていいだろう。
「選手に聞くと、とにかく痛いらしいです。石で殴られてるみたいな感じだって言ってましたね」
そう語ってくれたのは、ドキュメンタリー監督の今田哲史。ラウェイに挑む日本人選手、ラウェイ“直輸入”の興行を開催する日本人プロモーターを追った『迷子になった拳』が3月26日から一般公開される。
失神しても試合続行「メチャクチャです」
この映画でも描かれているように、ラウェイのルールはかなり独特だ。グローブを着けないだけでなくヒジ打ち、さらに頭突きも有効。投げ技もOKだ。レフェリーが数えるダウンカウントは他の格闘技より遅く感じる。また「タイム」というとてつもないルールも存在する。試合中1度だけ、選手もしくはセコンドがタイムを要求し、試合を中断させることができるのだ。
「たとえば選手がダウン、失神して“これは確実にKOだな”という場面でもセコンドがタイムをかけられるんです。そうして選手をコーナーに引きずっていき、目を覚まさせて試合を続ける。メチャクチャといえばメチャクチャです(笑)」(今田)
映画の序盤、日本での試合をさばくレフェリーが「要は死ぬまでやれってことですね」と呆れたように言う場面がある。確かにそう見えるのだが、しかしそればかりではないことも映画の中で分かってくる。