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「特に原動力はないけれど…」クロスカントリー世界選手権10大会連続出場の40歳・石田正子が淡々と挑む、指導者と競技者の両立
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PHOTO
posted2021/03/21 17:00

代表4人のうち3人は20代。石田(右から2人目)は若手の練習メニュー作成も担った
「(転倒した場所は)雪が緩んでいましたね。その前に雪が降って、気温が高いことでつまるような感じになってました。そこでポールが折れたりはせず、大崩れしないでゴールできたのでまだよかったです」
さらにこう語る。
「今シーズンはコロナもあってしっかり練習できていない中、シーズン終盤にまずまずの成績が出せたのはほんとうによかったです」
日本のエースは自力で道を拓いてきた
世界選手権のみならず、日本のエースとして、石田は競技を牽引する立場として歩んできた。オリンピックも2006年トリノ大会から4大会連続で出場し、2010年のバンクーバー五輪30kmクラシカルでは日本史上最高の5位入賞を果たしている。
石田はその道のほとんどを、自力で拓いてきた。活動資金が不足すれば自らスポンサーを探し、「よいコーチを紹介してください」とチームに携わる海外のスタッフに手紙を書いたこともある。ナショナルチームの資金不足でワールドカップ参戦もままならなくなると、ノルウェーの指導者に紹介してもらったノルウェーのチームと契約し、海外で活動する土台を整えた。
そんな石田を、周囲にいる競技の関係者がどう捉えているのか。石田本人はこのように感じている。
「はたから見ると、めげることがなくて、ちょっと何かあってもなんとかなるでしょう、大丈夫でしょう。なんとかしてくれる、勝手に強くなってくれるでしょう、みたいなイメージでしょうか」
日本で屈指のキャリアを有し、世界で戦ってきた経験を持つことから、今回の世界選手権では、選手としての部分以外も担うことになった。それは他の3選手への指導的な役割だ。
「監督から、3人の選手の練習メニューを作ってくれないかと相談されて、3人がヨーロッパに来てから世界選手権が終わるまで作っていました」
中継していたNHKの試合後の取材でも、しばしばコーチとしてのコメントを求められた。ただ、「答えていいのか分からない中で、どこまで言っていいのか分からず、取材に対応していました」と語る。