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「特に原動力はないけれど…」クロスカントリー世界選手権10大会連続出場の40歳・石田正子が淡々と挑む、指導者と競技者の両立
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PHOTO
posted2021/03/21 17:00

代表4人のうち3人は20代。石田(右から2人目)は若手の練習メニュー作成も担った
ナショナルチームの組織図としては、石田にコーチという肩書があるわけではない。つまり、コーチ兼任で挑んでいたのではない。だから、尋ねられても戸惑いがあった。
3人は皆、日本大学の後輩であり、彼女たちが大学1年生のときからテクニックを教えていた縁はあった。コーチの肩書はなくても、そんな3人のために、それぞれに合わせた練習メニューを作った。
「1人の選手だけを教える分には、それを通じて、自分自身のテクニックの再確認にもなります。ただ3人となると、三者三様で少し時間がかかります」
一競技者の立場であれば、どの競技のどの選手であれ、大舞台に挑み、大会を過ごす中で自分に集中したいはずだ。なのに、専念できないという状況は負担になった面もあったのではないか。はたからは、そのような想像が浮かぶ。
選手として、コーチとして
「でも、頑張って、やろう、とも思いました」
選手として培った経験や技量が抜きん出ていることの自覚、そして責任感が、その言葉にあった。
来シーズンは、オリンピックイヤーだ。北京五輪を控える。
「北京のことは、特にまだ考えていません。まだ考えが定まらないです」
どのような選択をするのかは分からない。
ただ、クロスカントリースキーへの思いは変わらない。
「スポーツとして、健康的でいいスポーツですし、日本に関して言えば、これから裾野が広くなっていくスポーツだと思います」
これまでも、1つ1つ、見えた課題をクリアしながら、自身に磨きをかけながら、日本の軸として歩んできた。そして突出した存在になった。
1つ1つの歩みはまだ止まらない。なんだか、そう思えた。
