スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルサ低迷の元凶、史上最低な「のび太」前会長逮捕… メッシも呆れた“その場しのぎの対応”と世論操作とは
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byDaisuke Nakashima/Getty Images
posted2021/03/12 11:02
スペインでも放映される『ドラえもん』になぞらえて“のび太”と呼ばれていたバルトメウ前会長だが、メッシらの信頼も失った
「バルサ史上最低の会長」に同情の声はほぼなし
何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される。その原則はスペインにおいても変わらないのだが、逮捕前から「バルサ史上最低の会長」と叩かれまくっていたバルトメウに対し、同情的な声はほとんど聞こえてこない。
元々バルトメウはラポルタが結成した「エレファント・ブラウ」の一員で、2003年の会長選後はラポルタ執行部の一員としてバスケットボール部門の責任者などを務めていた。
その後ラポルタと決裂してクラブを去るも、サンドロ・ロセイの右腕として2010年の会長選に勝利し、副会長としてカムバック。2014年1月にネイマールの契約問題でロセイが辞任に追い込まれると、会長代行という形ながらクラブのトップに上りつめた。
スポンサー収入、そしてネイマールを失う失態続き
正式に会長に就任したのは2015年7月。トップチームが史上2度目の三冠を獲得した勢いに乗じて会長選をものにするまではよかったのだが、その後の5年間で彼の評判は地に落ちることになる。
最初の失態は契約料の値上げを図ってカタール航空の怒りを買い、年間6000万ユーロのスポンサー収入を失ったことだ。ネイマールのPSG移籍は言わずもがな。副会長が「200%残る」と公言した直後に引き抜かれたことで、それが全くの想定外だったことを自ら露呈していた。
選手補強はことごとく外れ、アダマ・トラオレ、エリック・ガルシアなどラ・マシアの人材流出も止まらなかった。言われるままに主力選手の給料を上げ続けた結果、負債の山は10億ユーロまで膨らんだ。
トリノの0-3、ローマの0-3、リバプールの0-4、そしてリスボンの2-8。高齢化が進むトップチームはヨーロッパの舞台で信じられない失態を繰り返し、同時期にCL3連覇を成し遂げたレアル・マドリーとの対比に苦しんできた。
その間、バルトメウはネイマールの契約における不正疑惑で訴えられても(ちなみに今もこの裁判は続いている)、バルサゲートの発覚後に「ディミシオ(辞めろ)!」コールを受けても、メッシの退団騒動で大バッシングを受けても、真顔で「辞める理由が見当たらない」と言って会長室に居座り続けた。