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J監督は“浪人期間”に何する? アトレティコ視察&娘と見た『約束のネバーランド』《J2山口・渡邉晋の場合》
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/03/09 11:01
今季からJ2レノファ山口の再建を託された渡邉晋監督。約1年間の“浪人”期間を経て、現場復帰となる
「やっぱり現場が好きなのね」
その後、ヴァンフォーレ甲府時代のチームメイトで、神奈川大のGKコーチを務める伊藤友彦氏に声を掛けられ、9月中旬から同大で週1回の指導を始めた。三浦泰年氏に誘われて、同氏が創設したFCトッカーノの練習にも顔を出すようになり、少しずつ現場に近づいていくと、ある思いが明確になっていく。
「仙台での仕事が終わったとき、次は大きなチャレンジをしたいと思っていました。でも夏過ぎからの経験を経て、僕はサッカーを通して選手を育てることにトライしてきた、それが指導者としての原点だった、と多くの人に気付かせてもらった。だから、J1でもJ2でも、プロでもアマチュアでも、この1年間で整理したものでトライできる場所があるのなら、どこにでも行ってチャレンジしようという考えが固まっていきました」
最後に背中を押したのは、妻の一言だった。
「神奈川大やFCトッカーノに行って帰ってくると『いつも楽しそうな顔で1日の出来事を話しているよ』と言うんです。『あなたは、やっぱり現場が好きなのね』と言われたことを、よく覚えています。あれは決断する上で、とても大きな言葉でした」
J2山口で再出発、目標は「勝ち点60」
最初に正式オファーが届いた山口で、第2の監督人生を始めることを決断した。
昨季のJ2最下位から「2年でJ1昇格をつかみ取る」と宣言し、そのステップとして今季は、昨季の33から倍増近い勝ち点60が目標。「監督はすべての責任を負っているので、うまくいかなければ退くだけです。山口で長く過ごさせてもらおうなんて、のんきなことを言うつもりはない」との言葉には、強い覚悟がにじむ。
現在の練習で仙台時代からやっているメニューは、多い日でも半分くらいで、明らかに変わったと明かす。
「それは僕自身の挑戦でもありますが、挑戦する選手たちが多くのものを獲得してくれているという手応えは感じている」
それを踏まえて仙台時代を「当時は最善の方法だと思っていましたが、どこかで勝手にブレーキをかけていたんだろうと感じています」と振り返る。