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“変化しない”のも川崎の強さ… ジェジエウのカバーリングが“ファンダイクみたい”【次戦クルピと師弟対決】
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いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/03/03 06:00
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ペレイラからチアゴ・マルチンスまでJリーグには数々の名ブラジル人CBがいたが、ジェジエウもまたその1人だ
特に前半に関しては、ほぼ一方的に主導権を握り続けた展開になった。何か特別なマリノス対策を施していたというわけではなく、普段着のまま戦ったら、試行錯誤している相手を押しつぶしてしまったという印象である。
プレッシングが面白いように機能した理由
序盤、面白いように機能したのが前線からのプレッシングだった。
川崎は中央のレアンドロ・ダミアンが最前線からスイッチを入れると、そこに両ウイングの三笘薫と家長昭博も連動する。ウイングは、いわゆる「外切り」と言われる、サイドバックに入るパスコースを塞ぐプレッシングを行うのが基本だ。そうやってサイドではなく中央のルートにボールを誘導し、そこを中盤の3枚で奪い切る狙いがある。そして、これが見事にハマった。
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なぜか。
原因はマリノス側にあったと言っていい。ビルドアップが始まると、左サイドバックのティーラトンが中央に移動する形になり、3バックになる可変型システムを採用。だが、これが川崎が狙うハイプレスの網に自らかかる噛み合わせになってしまった。
川崎の両ウイングからすれば、背後にいるサイドバックへのパスコースを限定させながら、中央に圧力をかけていく作業が肝になるはずだったが、そのサイドバック自らが中央に入ってくるので、背中を気にする必要がない。
実際、右ウイングにいる家長昭博は、中に動くティーラトンの存在に後ろ髪を引かれずに、対面の左センターバックである畠中慎之輔にプレッシャーをかけることに専念できていた。当然ながら矢印の勢いは加速する。これは逆サイドの三笘薫も同様である。
数的同数で圧力を受けたマリノスは……
困ったのは、ボールを持っていたマリノスの3バックだろう。川崎の3トップから数的同数で圧力を受ける形になっても、受け手がいないサイドには逃げ道がない。
たまらず最後尾にいるGKオビ・パウエル・オビンナまで下げてビルドアップをやり直そうとしても、今度はそれをレアンドロ・ダミアンが猛追。チェイシングによるブロックがゴールになりそうな場面が散見された。
結果、マリノスは狭い中央に縦パスを無理に入れたところを、川崎に狙い撃ちでパスカットされ、ショートカウンターを浴び続けた。前半だけで川崎が2点を奪ったが、決定機の数を考えれば、それ以上に点差が開いてもなんら不思議ではない展開だった。