マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校からプロ野球、元エリート球児の“意外な”悩み「プロ同期との人間関係がツラくて野球がイヤに…」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byGetty Images
posted2021/03/02 17:01
元エリート球児の意外な悩み事とは? ※写真はイメージです
「1月の合同自主トレの初日、プロの先輩たちに混ざって走ったり、キャッチボールやったり、一緒に練習してみて、これならオレもなんとかやれそうだなぁ……っていう実感を得られるかどうか。そうなるように、高校生は夏から、大学生は秋のリーグ戦が終わってからも、さらにレベルアップできるための練習に励んでほしい」
この連載コラムでも、前に一度ご紹介した逸話だが、プロで活躍したい学生選手たちにはぜひ肝に銘じておいていただきたい「見識」の1つだと、今も思っている。
「プロの同期との距離感が分からない」
そしてつい最近のことだ。同じような話が聞こえてきた。
「プロの同期の連中と距離感を保てない、みたいなこと言ってきて。練習がきついとか、精神的にしんどいとか言うヤツはいたけど、人間関係っていうんですか……そっちのほうで、泣きを入れてきたヤツは初めてですね」
「人間関係」って、どうやって鍛えてやったらいいんですか。
逆に問われて、返す言葉がなかった。
同じように高校から入った同期を、どう呼んだらいいかわからない。おい、なのか、ちょっとキミ、なのか、呼び捨てでいいのか、それとも「山田君」なのか。同い年でも同期でも、相手はプロにまで入ってきたヤツだ、しかも、高校時代の“実績”は向こうが上なのだから、呼び捨てじゃ失礼だろう。
またいろいろな誘いに対して、なんと言って断ったらいいのかわからない。断り方がわからないから、とりあえず、いいよ、いいよ……で受け入れて、意図とは違うことで、貴重な時間を使わざるを得ないジレンマ。
肝心な「野球」ではなく、私生活の煩わしさのせいで、「プロ」がいやになってきた。
どうやら、そうした趣旨の「泣き」だったようだ。
野球以外の思い出がほとんど出てこない……
ハタチ近くなって、子供じゃないのに、なにを情けないことを……。そんな「一喝」で片付けられないような気がした。
高校球児にとってプロのきつい練習も、すごい選手たちばかりのプレッシャーも、そりゃあツラいのだろうが、それ以上に「人間関係」というほとんど経験していないテーマほど高いハードルはないんじゃないだろうか。そこに行き着いた。