マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「野球やめなきゃいいな…」少年野球の現場で考えた“4~6mの差” なぜ“名キャッチャー”は生まれにくくなった?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byGettyImages
posted2021/02/24 18:05
※写真はイメージです
ただただ楽しいだけで、そうでない記憶があるとすれば、アウト、セーフで口論になった時とか、たまに取っ組み合いのケンカになったことぐらい。野球そのものに、“辛い記憶”など何も出てこない。辛ければ、あんなに夢中になって、毎日野球ばかりやっていなかっただろう。
考えてみれば、投手もそこそこストライクが入って、打球もポンポン飛んで来た。間にエラーはちょいちょい挟まったが、生意気に、捕手の私も結構盗塁を刺して、子供なりに軽快なテンポで試合は進行していたように思う。だから、野球が楽しかったし、たまらなく面白かった。子供たちの歓声がこだまして、それだから、みんな、野球に夢中になった。
野球やめなきゃいいな……
それが、目の前のこのどんよりした重苦しい空気はなんだろう。
投手はストライクを投げることに汲々として四球を続け、捕手はその「荒れ球」の捕球と投手への返球にやっとで、他の選手たちは、めったに打球が飛んで来ないから、それぞれのポジションでボーッと立っていて、すっかり退屈してしまっている。
これだけストライクが来ないと、打者も気の毒だ。打ってもヒットになりそうもないボールを打ちにいって空振りの三振。
とりわけ、捕手の少年がかわいそうだった。四球連発に何もできず、抜けたボールを捕り損ねて、盗塁はフリーパス。気の毒に、今日は「失敗体験」を重ねて、家に帰るわけだ。同じ捕手経験者として、「彼」の気持ちがわかるだけに、見ていて胸が詰まった。
これじゃ、キャッチャー上手くなろうなんて、思わないだろうな……。それどころか、野球やめなきゃいいな……そんなふうに心配になっていた。
同じ年ごろの、同じ「野球」なのに、なぜこんなにも「現場」の雰囲気が違うのか。
「14~16m」と「10m」の差
私なりの理由はこうだ。