マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
昨季100試合以上出場のキャッチャーは2人だけ…なぜプロ野球では“名捕手”が生まれにくくなった?
posted2021/02/24 18:06
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
“流しのブルペンキャッチャー”として全国各地、数多くのアマチュア選手を取材、実際にボールを受けてきた筆者。昨年のプロ野球で100試合以上出場した捕手が全球団で2人しかいないことに気づく。なぜ球界の“名キャッチャー”はなかなか現れなくなったのか。(全2回の後編/前編へ)
昨季100試合以上のキャッチャーは2人だけ
今、ジャイアンツのキャッチャーって、誰がやってるんだっけ?
この問いかけに、
「去年は……小林(誠司)がケガでほとんど出られなかったから、大城(卓三)が100試合ぐらい(93試合出場)マスクかぶって、あとは炭谷(銀仁朗・56試合出場)かな」
そう答えながら、2位阪神に7.5ゲームの大差をつけてセ・リーグを制した巨人でさえ、「これがキャッチャーだ!」と言いきれるようなレギュラーマスクはいないんだなぁ……と、今さらながらに気がついた。
ならば、他球団はいかに? 調べてみたら、「この捕手がレギュラーマスク!」と1人の名前を挙げるだけで済む球団は、いくつもなかった。
ソフトバンク・甲斐拓也
西武・森友哉
昨シーズン、100試合以上出場した捕手は、この2人だけだった。
「昭和」からプロ野球を見ている私は、この事実にあらためて驚いた。レギュラー捕手は1人。そういうプロ野球に慣れていたからだ。
南海・野村克也捕手に代表される「名捕手」が何人も居並んで……「巨人は森(昌彦)」、「中日は木俣(達彦)」、「広島は達川(光男)」、「阪神は田淵(幸一)だけど、好きなのはダンプ辻(恭彦)」、「近鉄は先発投手によって、梨田(昌孝)か有田(修三)」。即答で返せる絶対的レギュラーマスクが君臨していたものだ。
「高校生らしくない」すべてをマネして怒られた
中でも私が、勝手に心酔して「お手本」にしていたのが、ヤクルト・大矢明彦だった。