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なぜ初球を投げて首を傾げたのか…楽天・田中将大、マウンドの“柔らかさ問題”とノーワインドアップ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHaruka Sato
posted2021/02/21 12:40
メジャー時代にノーワインドアップの“形”を変えた田中
一番の変化は投球に入る際のセットの形
1回に先頭の松本への初球が外角に外れた直後に、田中が少し首を傾げたのである。
マウンドが想像以上に柔らかかったのだ。
実は8年前に日本で無敗記録を作った田中と、米国に渡った田中の一番の変化は投球に入る際のセットの形にある。
日本時代はノーワインドアップでは打者に対して体がほぼ90度の角度(要は三塁ベース方向に正対した形)で構えて、肩越しに打者を見るような角度からモーションを起こしていた。
しかし米国に渡ってからは、打者に正対するように両足をプレートに平行に置いてセットする。そこから左足を少し引いて始動してテークバックに入っていくというスタイルに変えていた。
メジャー流はブレが大きくなるマイナスもある
一番、分かりやすいのはセンターカメラからの映像だ。日本時代のフォームだとセットの段階では背番号の18が全く見えないが、ヤンキース時代の映像でははっきりと背番号19が見て取れる。
実はこの米国時代のセットの仕方はメジャーの投手の多くが採用しているものでもある。
体を開いてセットすることで、両目で標的を見ることができるので、より正しくストライクゾーンを空間把握できるが、一方でそこから180度近く身体を捻ることで、ブレが大きくなるマイナスもある。
ただ、それでもメジャーの投手の間ではこのセットの方法が主流になっている背景には、マウンドの硬さがあるのだという。