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130試合目でプロ初勝利 DeNAの“優しい男”平田真吾が明かす「今日打たれたら…ファームだ」から脱出できた理由
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/02/12 17:35
沖縄県宜野湾市で行われている横浜DeNAベイスターズの春季キャンプ。クローザーの三嶋一輝やセットアッパーの石田健大といった主力リリーフ陣と同じ班で汗を流す平田真吾の姿が
「たしかに、すごく考えて投げるようになりましたよね。今までは、どうしようかという気持ちが先行してしまっているようで、よく声掛けをしていたのですが、今年は自信を持ってマウンドに立っていましたし、どんどん良いポジションで投げられるようになりました。
しかも、食事会場で真吾から『お前がバッターの反応とかいろいろ言うから、そこばっかり見て投げるようになっちゃったよ』って言われたんですよ。キャッチャーとしての役割ができたというか、真吾に少しでも貢献できたなって純粋に嬉しかったんですよね」
パワーのあるストレートを軸に両サイドに丁寧に投げ分けるピッチング。そこには意図と伏線があったと平田は自負している。
「意味のない球は以前にくらべ明らかに減りましたね。たとえボールであっても意味を持たせることはある程度できたと思います」
また伊藤は「ピッチングのカギになったのがツーシームという武器を持ったことです。それによって元々持っていたスライダーとフォークが活きましたね」と分析している。この意見には平田もうなずいた。
「相手バッターにとって僕のイメージは“スライダー多め”だと思うので、どうしてもそこに目をつけられてしまうと厳しいですし、両サイドをしっかり使えないと生き残ることができない。昨シーズンはツーシームを安定して投げられたことが一番大きかったと思います」
オーストラリアへ武者修行に
あらゆる面において好転した印象のある平田だったが、昨シーズンは開幕まで決して安易な道のりではなかった。
シーズン前のオフにはオーストラリアン・ベースボールリーグのキャンベラ・キャバルリーへチームメイトと武者修行に行き、初対戦となるパワーあるオージー選手たちの心理状態を読みピッチングの考察を深めた。ここでなにかを変えなければと考えて図ったサイドスローへの転身はまずまず上手く行っていたのだが、結局肘への負担が大きいことがわかりシーズンを通して維持できないと断念をした。また新しい球種をとカットボールを習得するも、シーズン中は甘く入った場合のリスクの大きさからあまり使うことができなかったという。
寄り道は多かったが、結果的に昨シーズンは毎年苦労していた春先とは異なり、自然にシーズンに入っていくことができた。
「いつもキャンプあたりは投げ方などで悩むことが多かったんですけど、昨年はそんなことはなかったんです。本当、心掛けたのは気持ちの面ですよね。シーズン中、自分の投げる場所や立場が変わっていくのは実感していましたが『ここで抑えないと元に戻ってしまう』とネガティブには考えないようにしたんです」
この数年、苦しんできたジレンマといかに向き合うのか。平田は相手バッターの様子や心理を窺うばかりではなく、自分の心にも語り掛けた。