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あの時、ランドオブリバティはなぜ“逸走”した? 「西船橋に飯を食いに」が的外れではない理由
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shimbun
posted2021/02/08 17:00
昨年12月のホープフルステークスで逸走したランドオブリバティ(右)。きさらぎ賞は3着に終わったものの、見事に修正し走り切った
というのは、中山の4コーナー出口、すなわち直線入口の外側(西側)には、一般道を挟んで200mも行かないところに、同競馬場の厩舎地区がひろがっているからだ。視界こそ遮られているが、風の強さによっては匂いが流れてきても不思議ではない。レース前の馬場入りで4コーナーや直線入口を通った馬は、位置関係を把握している可能性がある。逸走した馬は、西船橋ではなく、家(厩舎)に帰って飯(カイバ)でも食おうと思って、そちらに向かったのかもしれない。
中山に限らず、どの競馬場でも、外埒の外に出れば休むことができるとわかっているのではないか。
左手前で走ることが好き? 逸走の原因
また、これは調教助手時代、気の悪さで知られるステイゴールドに稽古をつけていた池江泰寿調教師から聞いたのだが、ステイゴールドは自分の左側にモタれると楽ができることをわかっていて、つねにそちらにモタれる隙を狙っていたのだという。
馬は必ず左側から乗り降りするなど、左側が重要になる。ランドオブリバティも、ひょっとしたらそうだったのかもしれない。
もうひとつ考えられるのは、ランドオブリバティは左手前で走ることが好きなのかもしれない、ということだ。だから、右手前で走らなければならない右コーナーは嫌いで、少しでも早く脱出しようとするのではないか。2戦目の芙蓉ステークスも中山芝2000mだったのだが、直線に向いた瞬間左手前に替えていた。タイミングとしてはちょっと早すぎるくらいだった。あのときも4コーナーで外に行きたがっていた。
ホープフルステークスの4コーナーでは、右手前で走っていたときから外に膨れ気味になり、三浦が右の手綱を引いて軌道修正している最中にポンと左手前に替え、外に飛んで行った。
考えることのできる頭のいい馬だから
いずれにしても、ランドオブリバティがただズルくて悪癖があるというわけではなく、人間に指示されたこと以外にいろいろなことを考える、頭のいい馬であることは間違いない。また、競走能力が相当高い、ということも確かだ。
管理する鹿戸調教師としては大変だろうが、この超個性派の能力をフルに引き出す手腕に期待したい。